有料職業紹介事業とは、手数料や報酬を受けて求人者と求職者の間の雇用関係の成立をあっせんする事業をいい、行うには厚生労働大臣の許可が必要です(職業安定法4条1項・30条1項)。許可の主な要件は、財産的基礎(事業所1か所なら基準資産500万円以上・現金預貯金150万円以上)、事業所(プライバシーを保護して対応できること)、職業紹介責任者(申請受理日の前5年以内の講習修了者を事業所ごとに選任)の3つです(出典: 厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」第3 許可基準)。申請は事業開始予定時期のおおむね2〜3か月前までに管轄労働局へ行い、許可の有効期間は新規3年・更新後5年です。本記事は、この許可要件から開業後の年次義務、初売上までを一続きの手順として解説します。
人材紹介は大きな設備投資が不要で、業界経験のある個人でも独立しやすい事業です。一方で有料職業紹介事業は許可制であり、要件を満たさなければ営業できません。そして許可を得ることと事業が回ることは別の問題です。厚生労働省の令和6年度集計では、事業報告書を提出した有料職業紹介事業所30,561か所のうち、その年度に就職実績があったのは13,946か所でした(出典: 厚生労働省「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」令和8年3月31日公表)。許可を持ちながら実績が立たない事業所が相当数あるということです。
本記事は、許可要件・申請手続き・開業後の年次義務という制度面と、初売上までに必要な業務の組み立てを、一本のロードマップとして通しで扱います。数値と条文は厚生労働省の一次資料に当たって記載し、出典を都度示します。
有料職業紹介事業とは
有料職業紹介事業とは、手数料または報酬を受けて職業紹介を行う事業のことです。ここでいう職業紹介とは「求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあつせんすること」を指します(職業安定法4条1項)。そして「有料の職業紹介事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない」と定められています(同法30条1項)。一般に「人材紹介会社」「人材エージェント」と呼ばれる事業は、制度上はこの有料職業紹介事業にあたります。
許可を要する「有料」の意味
有料か無料かの区別は、求職者から料金を取るかどうかではありません。求人企業から成功報酬を受け取る一般的な人材紹介も「有料」に該当し、許可が必要です。手数料を一切受け取らずに紹介する場合が無料職業紹介事業で、こちらは届出制・許可制の別区分になります。したがって、企業から手数料を得るビジネスモデルで開業するなら、有料職業紹介事業の許可が出発点になります。
紹介できない職業がある
許可を得ても、すべての職業を扱えるわけではありません。港湾運送業務に就く職業と建設業務に就く職業は、有料職業紹介事業では紹介が禁止されています(職業安定法32条の11第1項)。開業時に狙う領域がこれらに触れないかは、事業構想の段階で確認しておく必要があります。
手数料の受け取り方には枠組みがある
手数料の徴収方法にも制度上の枠組みがあり、上限制手数料と届出制手数料のいずれかを選ぶことになります。実務でよく聞く「理論年収の30〜35%」という水準は届出制手数料を前提とした話です。この論点は本記事では扱わず、人材紹介の手数料相場|30〜35%の根拠と法的上限・理論年収・返戻金の実務で法令の枠組みから返戻金の設計まで詳しく解説しています。
開業までの全体像:5つのステップ
許可制であるという性質上、開業は「準備 → 申請 → 待機 → 開始」という順序に縛られます。実務上は次の5ステップで進みます。
- ①事業構想・法人設立:特化する領域(職種・業界・年収帯)、両手型か片手型か、資本金や事業計画を固め、法人を設立します。
- ②許可要件を満たす:財産的基礎・事業所・職業紹介責任者という3つの柱を、1つずつ実体として満たします。
- ③許可申請:必要書類を揃え、事業開始予定時期のおおむね2〜3か月前までに管轄の都道府県労働局を経由して厚生労働大臣へ申請します。
- ④業務基盤の準備:求人開拓・求職者集客の導線と、選考管理の仕組みを整えます。許可を待つ間に着手できる工程です。
- ⑤初売上(初決定):推薦→選考→内定→入社まで求職者を運び、成功報酬を請求します。ここで初めて売上が立ちます。
事業構想・法人設立
特化領域・両手/片手・資本金
許可要件を満たす
財産的基礎・事業所・職業紹介責任者
許可申請
事業開始予定のおおむね2〜3か月前までに労働局へ
業務基盤の準備
求人開拓・集客・選考管理(許可待ちに並行)
初売上(初決定)
推薦→内定→入社→請求
つまずきやすいのは②の許可要件と、見落とされがちな④の業務基盤です。②は要件の中身を誤解したまま準備を進めると申請段階で手戻りが起き、④は準備を後回しにすると許可が下りてから売上ゼロの期間が長引きます。まずは開業判断に直結する「お金・期間・体制」から整理します。
いくら必要か・何ヶ月かかるか・1人でできるか
開業前に固まりにくい3つの問いに、先に答えます。
いくら必要か:財産要件だけでは足りない
有料職業紹介事業の許可には財産的基礎の要件があります。基準資産額(資産総額から負債総額を控除した額。繰延資産・営業権は資産から除く)が500万円に事業所数を乗じた額以上であること、かつ自己名義の現金・預貯金が150万円に「事業所数から1を減じた数×60万円」を加えた額以上であることが求められます(出典: 厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」第3 許可基準 1)。事業所が1か所なら、基準資産500万円以上・現金預貯金150万円以上です。
これに加えて法定費用がかかります。許可申請時には手数料5万円+1万8千円×(事業所数−1)分の収入印紙と、登録免許税9万円の納付が必要です(出典: 厚生労働省「職業紹介事業パンフレット -許可・更新等手続マニュアル-」令和7年4月)。事業所1か所なら合計14万円です。さらに法人を設立するなら定款認証・登記の実費が別途かかります。
① 法定費用
許可申請手数料5万円(収入印紙)+登録免許税9万円。ほかに法人設立の実費
② 財産的基礎(許可要件)
基準資産500万円以上、かつ現金・預貯金150万円以上(事業所1か所の場合)
③ 運転資金
初決定まで売上ゼロの期間を支える。要件ではないが実務上は必須
| 区分 | 金額 | 性質 |
|---|---|---|
| 基準資産額 | 500万円 × 事業所数 以上 | 許可要件(資産として保有していること) |
| 現金・預貯金 | 150万円 +(事業所数−1)×60万円 以上 | 許可要件(自己名義であること) |
| 許可申請手数料 | 5万円 + 1万8千円×(事業所数−1) | 収入印紙。消印後は返還されない |
| 登録免許税 | 9万円 | 納付に係る領収証書を申請書に添付 |
| 運転資金 | 法令上の定めなし | 初決定まで売上ゼロの期間を支える実務上の必要資金 |
重要なのは、財産的基礎は「許可を得るために保有していることを示す資産」であって、開業準備に使い切ってよい資金ではないという点です。人材紹介は成功報酬型で、求職者を入社まで運んで初めて売上が立ちます。最初の決定が出るまでは固定費だけが出ていく期間が続くため、その期間を支える運転資金を財産要件とは別に確保しておくのが実務的です。
何ヶ月かかるか:申請は開始予定の2〜3か月前まで
厚生労働省のパンフレットは、有料職業紹介事業を行おうとする場合には事業開始予定時期のおおむね2〜3か月前までに申請書類を提出する必要があるとしています(出典: 厚生労働省「職業紹介事業パンフレット -許可・更新等手続マニュアル-」令和7年4月)。逆算すると、法人設立・要件整備・書類準備の期間を加えて、構想から営業開始までは半年程度を見込んでおくと無理がありません。職業紹介責任者講習には開催日程があるため、そこがスケジュールの制約になりやすい点にも注意します。
1人でできるか:可能だが要件は同じ
代表1人で始めることは可能です。職業紹介責任者は「事業所ごとに当該事業所に専属の職業紹介責任者として自己の雇用する労働者の中から選任する」のが原則ですが、法人の役員を職業紹介責任者とすることは差し支えないとされています(出典: 厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」第3 許可基準/職業安定法施行規則24条の6)。代表自身が講習を受けて責任者になる形です。ただし事業規模にかかわらず要件そのものは同じで、財産的基礎も事業所要件も1人開業だからといって緩和されません。
1人開業では代表が求人開拓(RA)と求職者対応(CA)を兼ねる両手型が一般的です。業務が属人化しやすく、記録が個人の頭の中に残る形になりがちなため、後述する業務基盤の設計がとりわけ効いてきます。
ステップ①:事業構想と法人設立
許可要件の前に、どんな人材紹介会社をつくるかを決めます。ここが曖昧なまま許可だけ取っても、開業後の集客・開拓の軸が定まりません。最初に固めるべきは次の3点です。
- 特化する領域:職種・業界・年収帯のどこに集中するか。手数料は理論年収への料率で決まるため、扱う年収帯は採算に直結します。総合型を目指すより勝てる領域に絞るほうが、立ち上げ期は動きやすくなります。港湾運送業務・建設業務に就く職業は紹介できない点も、この段階で確認します。
- 両手型か片手型か:求人側(RA)と求職者側(CA)を1人で担う両手型か、役割を分ける片手型か。開業直後は両手型が基本ですが、増員後の分業を見据えて業務記録を最初から残すと移行が滑らかです。
- 資本金と事業計画:財産的基礎(事業所1か所なら基準資産500万円以上)を満たせる資本金を設定し、初決定までの資金繰りを含む事業計画を描きます。
法人形態は株式会社・合同会社などから選びます。個人事業主でも許可の取得自体は可能ですが、取引先企業からの信用や財産的基礎の示しやすさから、法人で取得するのが一般的です。なお個人事業主として許可を受けている場合、その個人事業主が死亡したときは10日以内に代表者死亡届の提出が必要になるなど、法人とは異なる手続きが生じます(出典: 厚生労働省「職業紹介事業パンフレット」令和7年4月)。
ステップ②:有料職業紹介事業の許可要件を満たす
許可基準は、財産的基礎・個人情報の適正管理・事業運営体制(欠格事由に該当しないこと、職業紹介責任者、事業所)という柱で構成されています(出典: 厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」第3 許可基準)。開業判断に必要な範囲で、実体として揃えるべきものを整理します。
| 要件 | 満たすべき内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 財産的基礎 | 基準資産額が500万円×事業所数以上、かつ現金・預貯金が150万円+(事業所数−1)×60万円以上 | 職業安定法31条1項1号/許可基準1 |
| 個人情報の適正管理 | 個人情報適正管理規程を定め、取扱者の範囲・教育・開示訂正・苦情処理の体制を整えること | 職業安定法31条1項2号/許可基準2 |
| 職業紹介責任者 | 申請受理日の前5年以内に職業紹介責任者講習を修了し、成年に達した後3年以上の職業経験がある者を事業所ごとに選任 | 職業安定法32条の14/許可基準3(2) |
| 事業所 | プライバシーを保護しつつ求人者・求職者に対応できる構造であること(代替経路あり・図3) | 許可基準3(3) |
| 欠格事由 | 法定の欠格事由(一定の刑罰歴など)に該当しないこと | 職業安定法32条 |
職業紹介責任者:講習は「申請受理日の前5年以内」
職業紹介責任者とは、求人・求職の申込みの受理や苦情処理、個人情報の管理などを統括管理する責任者です(職業安定法32条の14)。選任には2つの条件があります。ひとつは職業紹介責任者講習会を受講していること。ただし許可申請の受理日の前5年以内の受講に限られます。もうひとつは成年に達した後3年以上の職業経験を有することです(出典: 厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」第3 許可基準 3(2)ハ)。
選任すべき人数は事業所の規模で決まり、当該事業所で職業紹介に係る業務に従事する者の数が50人以下のときは1人以上、50人超100人以下のときは2人以上とされています(出典: 同要領/職業安定法施行規則24条の6)。1人開業なら1人で足ります。講習は開催日程が決まっているため、開業スケジュールから逆算して早めに受講予約を入れておくと、申請のボトルネックになりません。
事業所:面積20㎡は「唯一の道」ではない
事業所要件でよく「おおむね20㎡以上」という数字だけが独り歩きしますが、要件の本体はプライバシーを保護しつつ求人者・求職者に対応できる構造であることです。具体的には個室の設置やパーティション等での区分が挙げられ、これに代えて(a)予約制や近隣の貸部屋の確保等により他の求人者・求職者と同室にならずに対面紹介を行える措置を講じること、(b)専らインターネットを利用すること等により対面を伴わない職業紹介を行うこと、のいずれかでも要件を満たすものと認められます。さらに「当分の間」、(c)事業所の面積がおおむね20㎡以上であることによることも認められています(出典: 厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」第3 許可基準 3(3)ロ)。
要件:プライバシーを保護しつつ求人者・求職者に対応できること
他の求人者・求職者と同室にならずに対応できる構造を持つ
措置を講じない運営をした場合は許可取消しの対象という許可条件が付く
対面の職業紹介を行った場合は許可取消しの対象という許可条件が付く
面積で満たす経路。「当分の間」認めるものと位置づけられている
ただし(a)(b)を選ぶ場合、その措置を講じない運営がなされたとき((b)では対面の職業紹介を行ったとき)は許可の取消し対象となる旨の許可条件が付されます。オンライン専業で申請したのに対面面談を始める、といった運用は許可そのものを失うリスクを伴うということです。自宅の一室を事業所とする場合も、どの経路で要件を満たすのかを整理したうえで、事前に管轄労働局へ相談しておくと申請段階の手戻りを避けられます。
ステップ③:許可申請と、開業後に続く義務
要件を満たしたら、必要書類を揃えて申請します。申請書は、申請者の所在地(法人の場合は主たる事務所の所在地)を管轄する都道府県労働局を経由して厚生労働大臣へ提出します。時期は前述のとおり事業開始予定時期のおおむね2〜3か月前までです(出典: 厚生労働省「職業紹介事業パンフレット」令和7年4月)。
許可は取って終わりではない
有料職業紹介事業の許可の有効期間は、新規の場合は許可の日から起算して3年、更新を受けた場合は更新前の有効期間が満了する日の翌日から起算して5年です(職業安定法32条の6第1項・第5項)。引き続き事業を行う場合は、有効期間が満了する日の3か月前までに許可有効期間更新申請書を提出する必要があります(出典: 厚生労働省「職業紹介事業パンフレット」令和7年4月)。
さらに、開業後は毎年の事業報告が義務づけられています。職業安定法32条の16第1項は、有料職業紹介事業者に対し事業所ごとの事業報告書を作成し厚生労働大臣に提出することを求めており、実務上は毎年4月30日までに、前年4月1日からその年3月31日までの職業紹介事業の状況を様式第8号にまとめて提出します(出典: 厚生労働省「職業紹介事業パンフレット」令和7年4月)。あわせて帳簿書類の保存義務もあり、求人求職管理簿は求人または求職の有効期間の終了後、手数料管理簿は手数料の徴収完了後、それぞれ2年間の保存が必要です(出典: 同パンフレット)。
| 継続義務 | 期限・期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 許可の有効期間 | 新規3年/更新後5年 | 職業安定法32条の6第1項・第5項 |
| 許可有効期間の更新申請 | 有効期間が満了する日の3か月前まで | 厚生労働省パンフレット(令和7年4月) |
| 事業報告書の提出 | 毎年4月30日まで(対象期間は前年4月1日〜当年3月31日・様式第8号) | 職業安定法32条の16第1項/同パンフレット |
| 帳簿書類の保存 | 求人求職管理簿は有効期間終了後2年、手数料管理簿は徴収完了後2年 | 同パンフレット |
この表が意味するのは、開業初年度から「実績を集計して外部へ報告する」業務が毎年発生するということです。求人数・求職申込件数・就職件数・手数料といった数字を、日々の業務のなかで構造的に記録していないと、毎年4月に1年分を遡って掘り起こす作業が発生します。逆に、日常の選考管理がそのまま記録として残る仕組みがあれば、報告時の負荷は集計の確認作業まで下がります。
ステップ④:立ち上げ期の業務基盤をどう選ぶか
許可が下りても、求人と求職者を結びつけて入社まで運ぶ仕組みがなければ売上は生まれません。冒頭で触れた「許可を持ちながら就職実績が立たない事業所が相当数ある」という状況は、制度をクリアすることと事業が回ることが別だという事実を示しています。立ち上げ期に整えるべき業務基盤は、大きく3つです。
- 求人開拓(供給側):取引先企業を開拓し、求人を預かる導線。特化領域を決めていれば、狙う企業層が定まります。
- 求職者集客(需要側):求人媒体・スカウト・リファラルなどで求職者を集める導線。
- 選考管理(マッチング):預かった求人と集めた求職者を結びつけ、推薦→選考→内定→入社まで進捗を管理する基盤。
3つ目の選考管理を、開業直後はスプレッドシートで始める会社が少なくありません。件数が少ないうちは回りますが、決定数が増え扱う求人・求職者が数百件規模になると管理が破綻します。誰がどの選考のどの段階にいて次に何をすべきかが手作業で追えなくなり、選考中の求職者を放置して離脱させる機会損失が起き始めます。
重要なのは順序です。売上が伸びてからスプレッドシートを人材紹介向けCRMへ乗せ換えると、データ移行と運用の作り直しという二重のコストが、最も忙しい成長期に降りかかります。立ち上げ期こそ、基幹業務が途切れない一元管理の基盤を最初から持っておくと、この作り直しコストそのものが消えます。情報が最初から1か所に集約されていれば、増員時も繁忙期も業務は同じ基盤の上で連続します。
1人開業では特にこの効果が大きくなります。一元管理の基盤に情報を残していれば、事業の資産が代表個人でなく会社に蓄積され、増員・分業へ移る拡大の踊り場でつまずきにくくなります。
スモールスタートに合う業務基盤の条件
とはいえ、立ち上げ期に高機能・高価なシステムを抱え込むのは本末転倒で、売上ゼロの期間に固定費を膨らませると資金繰りを圧迫します。立ち上げ期の業務基盤に求めるべき条件は、次のとおりです。
- 少人数から始められること:利用人数に応じた料金体系で、成長に合わせて広げられること。大規模前提の価格・構成だと導入自体が重荷になります。
- 基幹業務が途切れないこと:求職者・求人・選考の管理が1つの基盤で完結し、増員・繁忙期でも作り直しが要らないこと。
- 移行コストが低いこと:すでにスプレッドシートで始めていても、そのデータを引き継いで乗せ換えられること。
- 実績が数字で見えること:面談数・紹介数・成約率といった実績が日々の運用の結果として蓄積され、いつでも参照できること。
人材紹介向けCRMのEmproは、こうした立ち上げ期の要件に沿った設計です。求職者・求人・選考ステータスを1つの基盤で管理するコアCRMを備え、スプレッドシートで溜めたデータもCSVで移行できます。面談数・紹介数・成約率などのKPIはダッシュボードでリアルタイムに可視化されるため、決定数が少ない立ち上げ期でも、どの段で止まっているかを数字で追えます。料金は初期費用¥100,000+1IDあたり月額¥10,000で、コアCRM・MA・メール/LINE連携・AIマッチングまでを含みます(詳細は料金ページ)。
業務基盤は機能の多さで選ぶものではなく、「立ち上げ期に無理なく始められ、成長しても作り直しが要らないか」で選ぶのが、開業期のコストと将来の負担を両方抑える考え方です。システムの比較軸そのものを整理したい場合は人材紹介システムの選び方|CRM/MAとの違い・比較の4軸・失敗しない導入手順を参照してください。
ステップ⑤:初売上(初決定)までの動き方
業務基盤が整ったら、最初の決定(初売上)を取りにいきます。人材紹介は成功報酬型で、求職者を入社まで運んで初めて売上が立ちます。初決定までの流れは次のとおりです。
- 求人を預かる:開拓した企業から求人を預かり、要件(職種・年収・必須条件)を把握します。手数料の水準と返戻金の条件も、この契約段階で握ります。
- 求職者を集め、面談する:集客した求職者と面談し、希望と経歴を整理します。
- 推薦する:求人と求職者をマッチングし、推薦文をつけて企業へ推薦します。
- 選考を支える:書類選考・面接の各段で求職者・企業双方をフォローし、途中離脱を防ぎます。
- 内定・入社・請求:内定承諾から入社まで運び、成功報酬を請求します。ここが初売上です。
立ち上げ期は決定数が少なく、1件1件の歩留まりが事業の存続を左右します。推薦しても書類で落ちる、選考中に音信不通になる——こうした取りこぼしを少ない母数でどれだけ防げるかが勝負で、誰がどの選考のどの段階にいて次に何をすべきかを一元管理で把握できる基盤が立ち上げ期から効いてきます。
契約段階で決まる手数料の水準は、初売上の金額をそのまま左右します。料率の枠組み・理論年収の考え方・返戻金の設計は人材紹介の手数料相場|30〜35%の根拠と法的上限・理論年収・返戻金の実務にまとめています。
初売上が立ったら、次に見るべきは「数字」です。売上は決定数×決定単価で決まり、その手前に登録から入社までの歩留まりが連なります。どの段で機会を失っているかを把握しておくと、2件目・3件目を再現性あるかたちで積み上げられます。この数字の見方は人材紹介のKPI管理 完全ガイドで体系的に解説しています。
開業でよくあるつまずき
最後に、開業でつまずきやすいポイントを挙げます。いずれも設計段階で避けられます。
- 許可取得をゴールにする:許可は出発点です。取得に注力するあまり求人開拓や集客が後手に回ると、許可が下りても売上ゼロの期間が長引きます。許可待ちの2〜3か月に業務基盤の準備を並行させます。
- 財産要件だけで資金を見積もる:基準資産500万円は保有を示すための要件で、使ってよい資金ではありません。許可申請手数料5万円・登録免許税9万円といった法定費用と、売上ゼロの期間を支える運転資金が別に要ります。
- 事業所要件を面積だけで判断する:20㎡は「当分の間」認められる経路のひとつに過ぎず、要件の本体はプライバシーを保護して対応できる構造です。非対面専業や予約制でも満たしうる一方、その場合は運用を外れると許可取消しの対象になる許可条件が付きます。
- 講習の受講時期を読み違える:職業紹介責任者講習は申請受理日の前5年以内の受講に限られ、開催日程も決まっています。逆算せずにいると、要件を満たすためだけに申請が数ヶ月遅れます。
- 年次義務を軽視する:事業報告書(毎年4月30日期限)や3年後の許可更新は開業初年度から視野に入ります。実績を構造的に記録していないと、毎年その集約作業に追われます。
よくある質問
Q. 有料職業紹介事業とは何ですか?
A. 手数料または報酬を受けて、求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあっせんする事業です(職業安定法4条1項)。行うには厚生労働大臣の許可が必要で(同法30条1項)、一般に人材紹介会社と呼ばれる事業はこれにあたります。求職者から料金を取らなくても、求人企業から成功報酬を受け取るなら「有料」に該当します。
Q. 有料職業紹介事業を始めるにはいくら必要ですか?
A. 許可要件として、事業所1か所なら基準資産500万円以上・現金預貯金150万円以上が必要です(出典: 厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」第3 許可基準)。加えて許可申請手数料5万円と登録免許税9万円の法定費用がかかります(出典: 厚生労働省「職業紹介事業パンフレット」令和7年4月)。財産的基礎は保有を示すための要件なので、初決定まで売上ゼロの期間を支える運転資金は別に用意する必要があります。
Q. 許可の申請から事業開始までどのくらいかかりますか?
A. 厚生労働省は、事業開始予定時期のおおむね2〜3か月前までに申請書類を提出する必要があるとしています(出典: 厚生労働省「職業紹介事業パンフレット -許可・更新等手続マニュアル-」令和7年4月)。法人設立・要件整備・書類準備の期間を加えると、構想から営業開始までは半年程度を見込むと無理がありません。この待ち時間は求人開拓の下地づくりや業務基盤の準備に充てられます。
Q. 1人でも有料職業紹介事業を始められますか?
A. 可能です。職業紹介責任者は事業所ごとに専属の従業員から選任するのが原則ですが、法人の役員を職業紹介責任者とすることは差し支えないとされており、代表自身が講習を受けて選任できます。従事者50人以下の事業所なら責任者は1人以上で足ります(出典: 厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」第3 許可基準)。ただし財産的基礎や事業所の要件は1人開業でも同じです。
Q. 職業紹介責任者になるための条件は何ですか?
A. 職業紹介責任者講習会を受講していること(許可または許可の有効期間の更新に係る申請の受理の日の前5年以内の受講に限る)と、成年に達した後3年以上の職業経験を有することの両方が必要です(出典: 厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」第3 許可基準 3(2)ハ)。加えて未成年でないことや欠格事由に該当しないことが求められます。
Q. 事務所は20㎡以上ないと許可は取れませんか?
A. 20㎡は唯一の道ではありません。事業所要件の本体はプライバシーを保護しつつ求人者・求職者に対応できる構造であることで、個室やパーティション等での区分のほか、予約制等により同室にならない措置を講じること、専らインターネットを利用して対面を伴わない職業紹介を行うことでも満たしうるとされ、「当分の間」おおむね20㎡以上という経路も認められています(出典: 厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」第3 許可基準 3(3)ロ)。ただし予約制・非対面を選ぶ場合、その運用を外れると許可取消しの対象となる許可条件が付きます。
Q. 許可を取ったあとに続く義務はありますか?
A. あります。許可の有効期間は新規3年・更新後5年で(職業安定法32条の6第1項・第5項)、更新申請は有効期間が満了する日の3か月前までに行います。加えて職業安定法32条の16第1項にもとづく事業報告書を毎年4月30日までに提出する義務が開業初年度から発生し、求人求職管理簿・手数料管理簿の2年間の保存義務もあります(出典: 厚生労働省「職業紹介事業パンフレット」令和7年4月)。
