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法令・基礎知識

職業紹介事業報告書の書き方|はじめてでも迷わない様式第8号の記入項目

執筆:宮崎将成(株式会社エボルグ 代表取締役)

公開日:2026-08-13 ・読了目安:9分

職業紹介事業報告書(様式第8号)は、職業安定法第32条の16にもとづき、前年度4月1日から3月31日までの実績を、毎年4月30日までに管轄の都道府県労働局へ提出する法定報告です。紹介実績がまったくない年度でも提出義務があります。

許可を取って最初の年度末を迎えると、必ず回ってくるのがこの手続きです。様式を開いてみたものの、どの欄に何を書けばいいのか分からず手が止まる——はじめての方がつまずくのは、たいてい同じ箇所です。

原因のほとんどは「いつの実績を書くのか」「その欄は時点の数か、期間の累計か」が直感と食い違うことにあります。センスや慣れの問題ではなく、様式の構造を知っているかどうかの差です。

この記事では、提出の基本ルールを押さえたうえで、労働局自身が「記載漏れ・誤りが多い」と公開している箇所を中心に、実務で詰まりやすい点を整理します。4月に慌てないために、いまのうちに構造だけ掴んでおくための記事です。

職業紹介事業報告書とは(期限・対象期間・提出先)

  • 根拠:職業安定法第32条の16。有料・無料を問わず、許可を受けた職業紹介事業者に課される報告義務です。
  • 提出期限:毎年4月30日まで。4月30日が閉庁日にあたる場合は翌開庁日までとなります。
  • 対象期間:前年度の4月1日から3月31日までの実績です。
  • 提出先:管轄の都道府県労働局。郵送のほか、e-Gov による電子申請も利用できます(電子申請には電子署名が必要です)。
  • 実績ゼロの場合:紹介実績がまったくない年度でも、提出は必要です。

「いつの実績を、いつ出すか」— report の年間サイクル

対象期間
4/1 → 翌3/31この1年度の実績を集計する
提出期間
翌4/1 → 4/30期限は4月30日。閉庁日なら翌開庁日
労働局の処理
2〜3ヶ月受理印付きの控えが返送されるまで

就職件数は「採用連絡を受けた日」で年度を切る。 翌年度4/1入社でも、3/31までに採用連絡を受けていればその年度の実績に計上する。

図: 職業紹介事業報告書の年間サイクル(東京労働局FAQ・静岡労働局の案内をもとに作成)

提出そのものは4月1日から受け付けられます。郵送する場合は切手を貼った返信用封筒を同封すると、受理印を押した事業主控えが返送されます。労働局側の処理には2〜3ヶ月かかるため、控えがすぐ戻らなくても通常の運用です。

様式および記入欄の構成は改定されることがあります。実際に記入する際は、必ず管轄労働局が配布する最新様式と記載例を確認してください。この記事の欄番号は東京労働局が公開している「職業紹介事業報告書(8号)よくあるご質問」(令和3年3月版)にもとづいています。

様式第8号に何を書くか

報告書は2面構成で、提出するのは1〜2面のみ・両面印刷が求められます。欄ごとに「時点の数」なのか「期間の累計」なのかが違うため、そこを取り違えると数字が合わなくなります。

欄記入する内容数え方
第1面 4①②有効求人数・有効求職者数年度末(3月31日)時点で有効な数
第1面 4①②常用求人数・臨時求人延数・日雇求人延数・新規求職申込件数年度の累計
第1面 4③就職件数年度内に採用連絡があったもの
第1面 4④・5⑧離職者数前々年度に就職した無期雇用就職者のうち6か月以内に離職した人数
第2面 6手数料上限制/届出制で記載欄が異なる
第2面 8返戻金制度導入の有無と、有の場合はその概要
第2面 9従業員教育職業紹介責任者が実施した教育の内容

臨時・日雇の「延数」は実働日数ではない

臨時求人延数・日雇求人延数は、雇用期間×人数で数えます。休日も含めた期間で計算するため、実際に働いた日数を数えるのではない点に注意してください。

紹介予定派遣は3か所すべてに書く

紹介予定派遣の実績がある場合、第1面3欄・4欄と第2面6欄のいずれにも記入が必要です。取扱業務等の区分ごとに、その内数としてカッコで囲んで記載します。

提出前に必ず確認したい、記載ミスが多い5点

労働局は、提出された報告書でよく見つかる誤りを公開しています。提出前のチェックリストとしてそのまま使えます。

労働局が「記載漏れ・誤りが多い」と挙げている箇所

  • 1合計欄の計算誤り
    各欄の合計の書き漏れ、足し合わせの誤り。提出前に縦横の合計を必ず検算する。
  • 2取り扱えない業務を計上している
    有料職業紹介事業者は建設業(70・71)を取り扱えない。なお施工管理は「09 建設・土木・測量技術者」に分類する。
  • 3手数料の記入欄違い
    上限制と届出制で記載欄が異なる。多くの事業者は求人者(届出制)手数料を採用している。
  • 4従業員教育の日時表記
    「随時」「四半期ごと」といった書き方は認められない。実施した日時を書く。
  • 5従業員数に責任者を含めている
    職業紹介責任者は従業員数に含めない。
図: 記載漏れ・誤りが多い箇所(東京労働局「職業紹介事業報告書(8号)よくあるご質問」令和3年3月版より)

特に見落としやすいのが手数料の記入欄です。上限制は法律で上限(11%)が定められている制度、届出制はあらかじめ届け出て上限を定める制度で、それぞれ記載する欄が分かれています。多くの事業者が採用しているのは求人者(届出制)手数料です。自社がどちらで届け出ているかを、契約書ではなく届出内容で確認してください。

従業員教育の欄も指摘の多い箇所です。職業紹介責任者が従業員に対して実施した教育の内容を書きますが、「随時」「四半期ごと」といった書き方は認められません。実施の時間・日数に定めはないので、実際に行った内容と日時をそのまま記載します。なお、職業紹介責任者だけで事業を行っており他に従事する従業員がいない場合は、記載不要です。

実績がゼロでも提出する

許可を持っている以上、その年度に1件も紹介実績がなくても報告義務はなくなりません。書類を出さないまま放置すると、指導の対象となり、許可の更新にも影響し得ます。

実績がない場合の書き方も決まっています。1欄・2欄・3欄・7欄・8欄・9欄を記入したうえで、第1面の余白に「実績なし」と記載します。すべての欄を空欄にして提出するわけではない点に注意してください。

また、返戻金制度についても、紹介実績がなく制度自体を設けていない場合は「無」に○を付けます。空欄のままにしないでください。

複数の事業所がある場合は、全事業所をひとまとまりとして、「正本」「写し(副本)」「写し(事業主控え)」の3セットをそれぞれクリップ留めするなどして提出します。

報告書の土台は日々の記録にある

ここまで見てきたとおり、報告書は「4月にまとめて思い出して書くもの」ではありません。求人数・求職者数・就職件数・手数料・離職者数はいずれも、日々の業務の中で発生している事実の集計です。

職業紹介事業者には求人管理簿・求職管理簿・手数料管理簿の作成と保存が求められています。これらが正しく運用されていれば、報告書の数字はそこから機械的に導けます。逆に、記録が担当者ごとのメールや個人のスプレッドシートに散っていると、4月に入ってから1年分を遡ることになり、集計漏れと計算誤りが生まれます。なお、提出期限を過ぎたまま労働局の指導にも報告徴収にも応じなかった事業者に事業停止命令が出た例があります(職業安定法違反とはで扱っています)。3種類のテンプレートはこちらから無料でダウンロードいただけます。

管理簿に記載すべき項目

管理簿記載すべき項目
求人管理簿①求人者の氏名又は名称 ②所在地 ③連絡先 ④求人受付年月日 ⑤有効期間 ⑥求人数 ⑦職種 ⑧就業場所 ⑨雇用期間 ⑩賃金 ⑪職業紹介の取扱状況
求職管理簿①求職者の氏名 ②住所 ③生年月日 ④希望職種 ⑤求職受付年月日 ⑥有効期間 ⑦職業紹介の取扱状況
手数料管理簿①手数料を支払う者の氏名又は名称 ②徴収年月日 ③手数料の種類 ④手数料の額 ⑤算出の根拠

共通して重いのが最後の「職業紹介の取扱状況」です。紹介した時期と相手、採否、採用年月日に加えて、無期雇用就職者である場合はその旨、転職勧奨が禁止される期間(採用年月日から2年後の応当日の前日まで)、そして6か月以内の離職状況まで記載します。離職状況は「調査したが判明しなかった」場合も、その旨と調査日・調査方法を残す必要があります。

報告書の離職欄がここに直結します。前々年度に就職した無期雇用就職者を6か月後に追跡していなければ、報告書を書く段階で調べようがありません。報告書のためではなく、日々の管理簿のために追跡しておくという順序になります。

特に手間がかかるのが、時点の数と期間の累計が混在している点です。年度末時点で有効な求人数と、年度を通じた新規求職申込件数では、集計の切り口がまったく違います。日次で記録が残っていれば、どちらの切り口でも後から出せます。

管理簿は有効期間の終了後2年間の保存が必要です。また、書面ではなく電磁的記録(表計算ソフトやシステム)で作成・備付けを行うことも認められています。その場合は、必要に応じて出力し、直ちに明瞭かつ整然とした形式で表示・書面化できる状態にしておくことが要件です。なお求職管理簿は個人情報を含むため、取扱いには十分注意してください。

集計を仕組みに乗せる

手集計をやめる一番の効果は、時間の削減よりも数字の再現性です。同じ定義で毎年同じように出せる状態になれば、報告書は確認作業だけで済みます。

Emproは人材紹介に特化したワンストップのCRM/MAとして、求人・求職者・選考の進捗を同じ基盤の上で記録できるよう設計しています。どこまで対応しているかは機能一覧をご覧ください。開業から許可・年次義務までの全体像は「有料職業紹介事業とは」で解説しています。

よくある質問

Q. 職業紹介事業報告書の提出期限はいつですか?

A. 毎年4月30日までです。4月30日が閉庁日にあたる場合は翌開庁日までとなります。報告の対象は前年度の4月1日から3月31日までの実績で、提出の受付は4月1日から始まります。根拠は職業安定法第32条の16です。

Q. 実績がゼロでも提出は必要ですか?

A. 必要です。紹介実績がまったくない年度でも提出義務はなくなりません。書き方も決まっており、1欄・2欄・3欄・7欄・8欄・9欄を記入したうえで、第1面の余白に「実績なし」と記載します。すべて空欄で出すわけではありません。

Q. 様式第8号はどこで入手できますか?

A. 厚生労働省および各都道府県労働局のウェブサイトから、ExcelとPDFの様式・記載例をダウンロードできます。様式は改定されることがあるため、毎年必ず最新版を入手してください。提出するのは1〜2面のみで、両面印刷が求められます。

Q. 求人管理簿・求職管理簿とは何ですか?

A. 職業紹介事業者が作成・保存を求められる帳簿で、取り扱った求人と求職者の記録を残すものです。事業報告書に記載する求人数・求職者数・就職件数は、これらの日常記録から集計します。日々の記録が整っていれば、報告書は転記で済みます。

法定帳簿テンプレート(Excel・無料)

求人管理簿・求職管理簿・手数料管理簿の3点セットです。列構成は行政が公開する「記載すべき項目」に準拠し、転職勧奨禁止期間や無期雇用就職者の離職状況まで記録できます。

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