内定承諾率とは、出した内定のうち求職者が承諾した割合を指す指標で、計算式は承諾数 ÷ 内定数です。目安は60〜65%とされます(出典: PORTERS「人材紹介業のKPI管理」)。承諾率を上げる要点は3つ。①辞退を「他社決定・条件不一致・家族の反対・意向変化」の4類型に分けて理由ごとに打ち手を変える ②条件の齟齬を内定前に潰す ③回答期限は求職者を縛る道具ではなく、迷いを整理する枠として設計する。内定通知は法的には労働契約の成立と評価されうる一方(最高裁第二小法廷 昭和54年7月20日判決・大日本印刷事件)、求職者はいつでも解約を申し入れられるため(民法第627条第1項)、辞退を強制的に止める手段はありません。承諾率は説得の強さではなく、選考中からの設計で動きます。
内定は取れているのに、承諾されずに売上が消える——。母集団形成や選考通過には数字で目が向いても、最後の「承諾」だけは各CAのクロージング力に委ねられがちです。しかし承諾率は押しの強さではなく、選考中にどれだけ求職者の意向と不安を掴めていたか、そして内定条件のズレを先に潰せていたかで決まります。
本記事は、内定を出してから承諾(または辞退)が決まるまでの局面に絞った実務ガイドです。辞退理由の分解、理由別の打ち手、内定保留・回答期限の設計、そして承諾率をプロセスで管理する方法までを扱います。登録から入社までの追客全体の設計は人材紹介の追客とは|稼働率を上げるエンゲージメント設計の実践ガイドにまとめており、本記事はその中の「内定後」の各論です。
内定承諾率とは|計算式と60〜65%という目安
内定承諾率とは、出した内定のうち求職者が承諾した割合を指す指標です。計算式は承諾数 ÷ 内定数。人材紹介のKPIファネルでは最下流に位置し、ここを通過した案件だけが入社・売上になります。上流の面談数や推薦数をいくら積んでも、承諾率が低ければ売上には届きません。
測る前に決めておくべきことが1つあります。分母の定義です。「企業が内定を出した数」を分母に置くのか、「内定を求職者に通知し、意思確認まで進んだ数」を分母に置くのかで、同じ実態でも数字は変わります。CAごとに定義がばらつくと、承諾率という指標そのものが比較できなくなり、改善の議論が成立しません。まず社内で1つの定義に固定してください。
内定100件を出したとき
承諾 60〜65%
目安とされる水準。ストライプ部分は「出典が示すレンジの幅」で、確定値ではない
辞退 35〜40%
承諾率の裏返し。ここまで積み上げた工数が売上にならない領域
水準の目安は60〜65%とされます(出典: PORTERS「人材紹介業のKPI管理」)。裏を返せば、内定の35〜40%は辞退で消えている計算になります。書類を通し、面接を通し、企業の合意まで取り付けた案件の3件に1件以上が、最後の一歩で成果にならない——これが承諾の壁です。
「内定率」と「内定承諾率」は別の指標
混同されやすいのが内定率です。内定率は「応募(または推薦)に対して内定が出た割合」を指し、選考を通す力を測ります。一方の内定承諾率は「内定に対して承諾された割合」で、意思決定を支える力を測ります。分母が違うため、改善の打ち手もまったく別物です。内定率が低いならマッチングと選考対策を、承諾率が低いなら条件のすり合わせとクロージング設計を疑う。両者を「内定まわりの数字」とひとまとめにすると、直すべき場所を取り違えます。
内定は「約束」ではなく「契約」——承諾率を法律から見る
承諾率の打ち手を考える前に、内定という行為の法的な位置づけを押さえておくと、やってよいことと無意味なことの線引きがはっきりします。
最高裁は、採用内定の通知によって始期付解約権留保付労働契約が成立したと評価しうると判示しています(最高裁第二小法廷 昭和54年7月20日判決・大日本印刷事件/民集33巻5号582頁)。つまり内定は単なる「採用の予約」ではなく、就労の始期が入社日に置かれ、企業側に一定の解約権が留保された労働契約だという整理です。企業側から見れば、内定取消しは客観的に合理的で社会通念上相当と認められる場合に限られる——内定を出した側の自由は、この時点でかなり制限されます。
一方、求職者側はどうか。期間の定めのない雇用について、各当事者はいつでも解約の申入れをすることができ、雇用は申入れの日から2週間を経過することによって終了します(民法第627条第1項)。就労開始前の内定辞退も、この枠組みの中にあります。ここから導かれる実務的な結論は明確です。内定辞退を法的に封じる手段は、基本的に存在しない。 「一度承諾したのだから」という説得は、法的な裏づけを持ちません。だからこそ承諾率は、押し込む力ではなく、迷いを生まない設計で上げるしかない指標なのです。
条件の齟齬は「辞退理由」である前に「法令上の論点」
辞退理由の中でも、条件不一致には法令が直接かかわります。職業紹介事業者は、職業紹介に当たり、求職者に対して従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければなりません(職業安定法第5条の3第1項)。さらに、求人者が紹介による求職者と労働契約を締結しようとする場合で、当初明示した労働条件を変更・特定・削除・追加するときは、その内容を改めて明示する義務があります(同条第3項、同法施行規則第4条の2第1項・第2項)。
明示すべき事項と方法も省令で具体化されています。明示は原則として書面の交付によって行い、求職者が希望した場合はファクシミリまたは電子メール等(受信者が出力して書面を作成できるものに限る)でも可とされています(同施行規則第4条の2第4項)。明示事項は次のとおりです。
| 区分 | 明示しなければならない事項 |
|---|---|
| 業務 | 従事すべき業務の内容(変更の範囲を含む) |
| 契約 | 労働契約の期間/試みの使用期間に関する事項 |
| 更新 | 有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間・更新回数の上限を含む)※有期の場合 |
| 場所 | 就業の場所(変更の範囲を含む) |
| 時間 | 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日 |
| 賃金 | 賃金の額(臨時に支払われる賃金・賞与等を除く) |
| 保険 | 健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険の適用に関する事項 |
| 雇用主 | 労働者を雇用しようとする者の氏名または名称 |
| 受動喫煙 | 就業の場所における受動喫煙を防止するための措置 |
実務への含意はこうです。求人票の条件と内定条件がずれた場合、それは「求職者ががっかりする話」である前に、再明示の義務が発生する場面にあたります。したがって条件のすり合わせは、辞退を防ぐための営業テクニックではなく、法令に沿った手続きの一部として選考の早い段階から回すべきものです。内定通知の瞬間に条件のズレを初めて表面化させる運用は、承諾率にも、コンプライアンスにも同時に効いてきます。
辞退理由を4つに分解する
承諾率を上げる出発点は、辞退を「なんとなく気持ちが離れた」で片付けず、理由を分類することです。実務上、内定後の辞退は次の4類型に整理できます。理由ごとに前兆も打ち手もまったく異なるため、この分解が改善の土台になります。
並走していた別の内定を先に承諾した
- 前兆
- 他社面接で日程が埋まる/返信が急に遅くなる
- 打ち手
- 並走状況の把握とペース合わせ
年収・勤務地・役割・入社時期が想定とずれた
- 前兆
- 条件の質問が細かくなる/書面の確認を求める
- 打ち手
- 選考初期の条件具体化と再明示
本人は前向きでも周囲の同意が取れない
- 前兆
- 「持ち帰って相談します」が繰り返される
- 打ち手
- 家族が判断できる材料を渡す
気持ちが揺れた/現職の慰留に傾いた
- 前兆
- 入社後の話題への反応が鈍る/連絡が減る
- 打ち手
- オファー面談で不安を言語化させる
現場の感覚としては、他社決定が上位に来やすい類型です。求職者が複数のエージェント・複数の企業に同時に応募するのは今や前提であり、選考が並走するなかで別の内定を先に承諾されれば、こちらの内定は自動的に流れます。ただし「一番多いのは他社決定」と断定できるだけの公開統計は見当たりません。辞退理由の構成比は、業界平均を借りるのではなく自社で記録して測るべき数字です。辞退が発生した時点で類型をひとつ選んで記録する運用を入れるだけで、3ヶ月もすれば自社の分布が見えてきます。
この4類型は独立ではなく、しばしば連鎖します。条件面の小さな引っかかりが不安を呼び、その隙に他社決定が入る——という流れは典型です。だからこそ辞退理由を1つに決めつけず、選考中に拾えた情報を並べて「どの類型のリスクが高いか」を見立てることが大切です。記録するときも、主因と副因を分けて残せると打ち手の精度が上がります。
理由別の打ち手——並走把握・条件の先出し・オファー面談
辞退理由を4つに分けたら、それぞれに対応する打ち手を用意します。共通するのは「内定を出してから慌てるのでは遅い」という点です。承諾の打ち手は、選考中から仕込んでおくものです。
他社決定:並走状況を把握し、選考ペースを合わせる
他社決定を防ぐ第一歩は、求職者が「今どこの選考を、どのくらいの温度で受けているか」を掴むことです。並走を明かさない求職者もいますが、面談のたびに「他に進んでいる選考はありますか」「その中で本命はどこですか」と自然に聞き、記録しておけば、承諾の見込みと辞退リスクを早めに読めます。他社の最終面接が迫っているなら、こちらも選考ペースを前倒しして意思決定のタイミングを揃える。このペース合わせが、他社決定による取りこぼしを最も直接的に減らします。
逆に言えば、企業側の選考が間延びしている案件は、それだけで辞退リスクを抱えています。RA側から企業へ「他社が最終まで進んでいるため、面接日程を前倒しできないか」と具体的に働きかけられるかどうかが分かれ目です。並走情報は、求職者の管理項目であると同時に、企業への交渉材料でもあります。
条件不一致:選考初期に条件を具体化し、ズレを先に潰す
条件不一致は、内定通知の瞬間に初めて表面化させてはいけません。年収・勤務地・役割・入社時期といった条件は、選考の早い段階で具体的な数字と優先順位まで聞き出し、企業側の想定とのギャップを把握しておきます。乖離があるなら、内定前に企業へ交渉余地を確認する、あるいは求職者に現実的な相場観を共有して期待値を調整する。前節のとおり、当初明示した労働条件を変更する場合には改めて明示する義務があります(職業安定法第5条の3第3項)。「言いにくいから内定時にまとめて伝える」は、承諾率と法令遵守の両方を損なう運用です。
家族の反対:意思決定者を早めに把握し、材料を渡す
転職は本人だけの意思決定ではありません。既婚者や実家暮らしの求職者では、配偶者や親が実質的な意思決定者になることがあります。選考中に「ご家族はこの転職についてどうお考えですか」と踏み込み、反対の可能性を早めに把握しておく。そのうえで、家族が気にする論点——勤務時間や勤務地、年収の安定性、企業の事業継続性——について、本人経由でそのまま渡せる形の情報を用意します。内定が出てから反対が判明すると打てる手は限られるため、ここも前倒しが効きます。
意向変化・不安:オファー面談で迷いを言語化させる
意向の揺れや漠然とした不安に効くのがオファー面談(内定後に条件の最終確認と入社後のイメージ共有を行う場)です。内定を通知して終わりにせず、求職者・企業・エージェントが顔を合わせ、条件の読み合わせと、業務内容・チーム・キャリアパスの具体化を行います。入社後の解像度が上がると、不安由来の辞退は目に見えて減ります。
オファー面談で押さえたいのは、条件の確認だけでなく、求職者が言語化できていない不安を引き出すことです。「今、少しでも引っかかっている点はありますか」と正面から聞き、出てきた懸念に企業側の情報で答える。同席者は案件によりますが、入社後に一緒に働く現場の上長やメンバーが加わると、業務イメージのギャップが埋まりやすくなります。エージェントは求職者と企業の間に立ち、双方の温度差を翻訳する役割を担います。
4類型に共通する土台:内定通知から回答までの接触密度
どの類型にも効く共通の打ち手が、内定通知から回答までの接触密度です。この数日は求職者の気持ちが最も揺れる期間で、ここで連絡が空くと不安が膨らみ、他社の声が入り込む余地が生まれます。面接直後の即日フォロー、内定通知時の丁寧な条件説明、回答期限までのこまめな確認——この積み重ねが辞退の芽を摘みます。なお、登録から入社までの各フェーズをどう設計するかという全体像は人材紹介の追客とは|稼働率を上げるエンゲージメント設計の実践ガイドで扱っています。
内定保留・回答期限をどう設計するか
内定の回答期限(内定保留期間)に、法令上の定めはありません。 実務では内定通知から1週間前後を提示するケースが多く、他社選考の状況に応じて延長を判断します。期限は求職者を縛るための道具ではなく、意思決定を先延ばしにさせないための枠として設計するものです。
内定通知
労働契約の成立と評価されうる
最高裁 昭54.7.20(大日本印刷事件)
回答期限
実務では1週間前後を提示するケースが多い
法令上の定めなし
承諾 → 退職申入れ
申入れの日から2週間の経過で雇用は終了
民法第627条第1項
入社
引継ぎ・就業規則の定めを踏まえて調整
法令上の定めなし
前節で見たとおり、求職者はいつでも解約を申し入れることができます(民法第627条第1項)。したがって「期限を過ぎたから辞退できない」という運用は成り立ちません。期限に意味を持たせられるとすれば、それは企業側の採用計画と、求職者自身の意思決定を噛み合わせる目的においてです。伝え方も「◯日までにご回答ください」ではなく、「企業側が◯日までに他候補者の選考判断をしたいと言っているため、それまでにお気持ちを固められるようご支援します」と、期限の理由と支援の意図をセットで置くほうが機能します。
保留は「迷いのサイン」——理由を分類してから延長を判断する
回答保留を求められたとき、反射的に延長を認めるか押し切るかの二択にしないことが重要です。保留は、前節の4類型のいずれかが動いている合図です。他社の結果待ちなのか、条件に納得できていないのか、家族と話せていないのか、入社後が想像できていないのか——理由を聞き出せれば、延長の可否ではなく打ち手が決まります。
- 他社の結果待ちなら:他社の選考スケジュールを具体的に確認し、企業側に期限の調整余地を打診します。並走の事実を隠したまま延長だけ通すと、こちらの企業への説明が持ちません。
- 条件に納得していないなら:どの項目が、どの水準なら納得できるのかを数字で聞きます。交渉の余地があるなら企業へ、無いなら他の価値(役割・裁量・働き方)で埋められるかを一緒に検討します。
- 家族と話せていないなら:延長そのものより、家族が判断するための材料を渡すことが先です。期限は「家族と話す予定日」から逆算して設定し直します。
- 入社後が想像できていないなら:オファー面談や現場社員との面談を追加で設定します。ここは延長する価値が最も高いケースで、材料を足せば意思決定が進みます。
入社日は退職交渉の時間を織り込んで置く
承諾したあとに崩れる案件の多くは、入社日の設計に無理があります。法律上は解約の申入れから2週間の経過で雇用が終了しますが(民法第627条第1項)、実際には引継ぎや就業規則の定めを踏まえて調整されるため、在職中の求職者に対して短すぎる入社日を置くと、現職の慰留に巻き込まれる時間だけが増えます。入社日は企業の希望をそのまま伝えるのではなく、退職交渉に必要な期間を確認したうえで、現実的な日程を企業と握り直すのがエージェントの仕事です。
承諾率をプロセスで管理する
ここまでの打ち手を「気づいたCAが、覚えている範囲でやる」運用に任せると、繁忙期に必ず漏れます。承諾率を安定して上げるには、辞退の前兆を仕組みで拾って打ち手につなげるプロセスが要ります。
前兆は、日々の記録の中に現れます。返信の間隔が空きはじめる、面接後の反応が鈍る、他社の話が急に増える、条件面の質問が細かくなる——単体では見過ごされるサインも、選考ステータスと接触履歴が同じ場所に揃っていれば拾えます。ツールを行き来しながら記憶を頼りに追う運用では、前兆は必ず取りこぼされます。
| 前兆シグナル | 疑うべき類型 | その場で取る行動 |
|---|---|---|
| 返信間隔が急に空く | 他社決定・意向変化 | 電話で直接接触し、他社の進捗を確認する |
| 面接日程の調整が難しくなる | 他社決定 | 並走先の選考段階を聞き、企業側に前倒しを打診する |
| 条件面の質問が細かくなる | 条件不一致 | 書面で条件を再確認し、変更があれば改めて明示する |
| 「持ち帰って相談します」が続く | 家族の反対 | 誰と何を相談しているかを聞き、渡す材料を作る |
| 入社後の話題への反応が鈍い | 意向変化・不安 | オファー面談または現場社員との面談を設定する |
人材紹介向けCRM/MAのEmproは、この「記録から打ち手へ」の流れを1つの基盤で支えます。選考ステータス管理で各求職者が選考のどの段階にいるかを時系列で可視化し、メール・LINEのやりとりを同じ画面に集約する。内定・回答待ちの求職者が誰で、最後の接触がいつだったかが一覧で見えるため、回答期限までのフォローを設計に落とせます。
- 選考ステータス管理:求職者別の面談・選考進捗を時系列で可視化します。内定・回答待ちの案件を取りこぼさず、期限までのフォローを組めます。
- メール・LINEの一元管理:複数チャネルのやりとりを1画面にまとめ、自動で取り込みます。返信の途絶という前兆が、記憶ではなく履歴として見えます。
- 日程調整(公開予約ページ/カレンダー連携):候補者が空き枠から自分で予約できます。オファー面談や現場社員との面談を、日程調整の往復で遅らせずに設定できます。
- 売上予測(予測ボード・予実・前週比):選考中の案件を確度ステージで加重し、着地見込みを読みます。内定・回答待ちの案件がいくらの見込み売上かを、週次の推移で追えます。
- ダッシュボード・分析:面談数・紹介数・成約率などのKPIをリアルタイムに可視化します。承諾率を継続的にモニタリングする土台になります。
最後に、承諾率を動かす価値の大きさを押さえておきます。承諾率は分母の大きさに関係なく、上流の工数をそのまま節約する指標です。
決定10件をつくるために必要な内定数(=10 ÷ 承諾率、小数点以下切り上げ)
承諾率が60%から75%に上がると、同じ決定10件に必要な内定は17件から14件へ。内定を3件分つくる工数がまるごと不要になる、という読み方をする
同じ決定10件をつくるのに、承諾率60%なら内定が17件必要ですが、75%なら14件で足ります。内定3件分の推薦・面接調整・企業折衝がまるごと不要になる、という意味です。母集団を増やして内定数を積むより、承諾率を数ポイント動かすほうが安く効くケースは珍しくありません。売上目標から必要行動量を逆算する設計は人材紹介のKPI管理 完全ガイドで、1件あたりの売上をどう設計するかは決定単価とは|人材紹介の1成約あたり売上を設計する考え方と上げ方で扱っています。
やってはいけないクロージング
承諾率を追うあまり、辞退しかけた求職者を強引に説得して入社させるのは、最も避けたい失敗です。目先の1件は承諾に変わっても、納得しないまま入社した求職者は早期に離職しやすく、その代償は返戻金として跳ね返ります。
返戻金は在籍期間に応じて逓減する段階設定が一般的で、入社後1ヶ月以内なら80%、1〜3ヶ月以内なら50%といった水準が広く使われています(出典: doda DSJ/マンパワーグループ)。無理に承諾させて早期離職を招けば、得たはずの手数料の大半を失ううえ、企業との信頼関係も損ないます。返戻規定の相場と設計は人材紹介の手数料相場|30〜35%の根拠と法的上限・理論年収・返戻金の実務で詳しく扱っています。
承諾率と定着率はセットで見る指標です。承諾率だけを最大化しようとすると、納得の浅い入社が増え、返戻金と信頼毀損という形でツケが回ります。目指すべきは「気持ちよく承諾し、定着する内定」であり、そのためには迷いを押し込めるのではなく、迷いの正体を解消する打ち手に力を注ぐべきです。前節までの4類型別の打ち手は、すべてそのための設計です。
もう一つ。辞退した求職者を、そこで縁が切れたものとして扱わないことです。今回のタイミングや条件が合わなかっただけで、転職意欲そのものが消えたわけではありません。辞退後にフォローが止まった求職者は、そのまま休眠へ沈みます。無理に引き止めるのではなく、接触だけ低頻度で残しておけば、状況が変わったときに再び動く可能性があります。辞退から休眠化、そして掘り起こしまでの循環は休眠求職者の掘り起こし完全ガイドで解説しています。強引なクロージングで1件を潰すより、健全な辞退を次の機会へつなぐほうが、長い目で見た決定数は伸びます。
よくある質問
Q. 内定承諾率とは何ですか?計算式を教えてください。
A. 内定承諾率とは、出した内定のうち求職者が承諾した割合を指す指標です。計算式は「承諾数 ÷ 内定数」。分母を「企業が内定を出した数」に置くか「内定を通知し意思確認まで進んだ数」に置くかで数字が変わるため、社内で定義を1つに固定してから測ることが前提になります。
Q. 内定承諾率の平均・目安はどのくらいですか?
A. 目安は60〜65%とされます(出典: PORTERS「人材紹介業のKPI管理」)。裏を返せば内定の35〜40%が辞退で消えている計算です。ただし公的統計に基づく業界平均値は確認できておらず、事業モデルや求人の性質で変動します。この数字は目安とし、自社の実績値を測ったうえで基準にしてください。
Q. 内定の回答期限(内定保留期間)はどのくらいが普通ですか?
A. 回答期限に法令上の定めはありません。実務では内定通知から1週間前後を提示し、他社選考の状況に応じて延長を判断するケースが多く見られます。期限は求職者を縛る道具ではなく意思決定を助ける枠なので、「企業がいつまでに判断したいのか」という理由とセットで伝えるほうが機能します。
Q. 内定辞退を法的に止めることはできますか?
A. できません。採用内定は始期付解約権留保付労働契約の成立と評価されうる一方(最高裁第二小法廷 昭和54年7月20日判決・大日本印刷事件)、期間の定めのない雇用について各当事者はいつでも解約の申入れができ、申入れの日から2週間の経過で雇用は終了します(民法第627条第1項)。承諾率は説得ではなく、迷いを生まない設計で上げる指標です。
Q. 内定辞退で多い理由は何ですか?
A. 実務上は「他社決定・条件不一致・家族の反対・意向変化や不安」の4類型に整理できます。現場の感覚では他社決定が上位に来やすい一方、構成比を示す公開統計は乏しいのが実情です。辞退が起きた時点で類型を1つ記録する運用を入れ、自社の分布を測ることを推奨します。
Q. オファー面談は誰が同席すべきですか?
A. 求職者・企業・エージェントの三者が基本です。案件により、入社後に一緒に働く現場の上長やメンバーが加わると、業務内容やキャリアパスの解像度が上がり、入社後イメージのギャップからくる辞退を減らせます。エージェントは条件の読み合わせに加え、求職者が言語化できていない不安を引き出す役割を担います。
