人材紹介における送客とは、自社で受理した求職者(または求人)を、他社の人材紹介会社へ引き渡し、その会社にあっせんしてもらうことです。法令上は「職業紹介事業者間の業務提携」として整理されており、厚生労働省は求人・求職の結合可能性を高める積極的意義があるものとして、法にしたがって行われることを前提に認めています(出典: 厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」第9の7)。送客できる相手は許可を受けて適法に職業紹介事業を行う事業者に限られ、求職者に提携内容を明示して同意を得た場合にのみ提供できます。送客手数料は新しい種類の手数料ではなく、あっせんを行った事業者が求人企業から徴収した手数料を、事後的に送客元へ配分するものです(同 第9の7(8))。配分の割合を示す公的な統計はなく、提携ごとの契約で決まります。
「送客」という言葉は業界を越えて使われていて、旅行や飲食では顧客を送ること、Web広告では自社サイトから他サイトへ流入を送ることを指します。この記事が扱うのは人材紹介における送客、つまり紹介会社どうしで求職者や求人をやり取りする実務です。
現場では「自社の求人には合わないが、別の会社なら決まりそうな求職者がいる」「求人は取れたが動かせる求職者がいない」という場面が日常的に起こります。送客はこの機会損失を回収する手段ですが、求職者の個人情報を他社に渡す行為である以上、思いつきで始められるものではありません。
幸いなことに、この領域は厚生労働省が「職業紹介事業者間の業務提携」として正面から扱っており、誰が何を負うのかがかなり細かく決まっています。本記事は、その一次情報にあたって仕組み・手数料・実務の順に整理します。手数料の相場や上限制/届出制の全体像は人材紹介の手数料相場|30〜35%の根拠と法的上限・理論年収・返戻金の実務にまとめてあるため、ここでは送客に固有の論点に絞ります。
人材紹介における送客とは
人材紹介における送客とは、自社で受理した求職者や求人を他社の人材紹介会社へ提供し、その会社にあっせんしてもらうことです。厚生労働省の「職業紹介事業の業務運営要領」は、これを「職業紹介事業者間の業務提携」と呼び、職業紹介事業者等が自ら受理した求人又は求職を、あらかじめ特定された他の一又は複数の職業紹介事業者等に提供し、当該他の職業紹介事業者等が当該求人又は求職についてあっせんを行うことと定義しています(出典: 同要領 第9の7(1)イ)。「送客」は業界の通称で、制度上の呼び名は「業務提携」だと考えると、調べものの当たりがつけやすくなります。
定義に「あらかじめ特定された」とある点は見落とさないでください。その場の思いつきで知り合いの会社に流す行為は、ここでいう業務提携の枠組みに乗っていません。提携先を特定し、求職者にその提携先を明示したうえで同意を得る、という順番が前提になっています。
社内の受け渡しは送客ではない
同じ要領は、一の職業紹介事業者等の異なる事業所間における求人・求職の提供は通常の事業活動に含まれるとも明記しています(出典: 同要領 第9の7(1)イ)。つまり、東京支店で受けた求職者を大阪支店に回すのは業務提携ではなく、後述する同意や明示のルールも適用されません。社外に出るかどうかが分かれ目です。社内の担当者間でどう分けるかという話はRA・CAとは|役割の違いと、両面型・分業型の使い分けの領域になります。
なぜ「積極的な意義がある」とされているのか
送客はグレーな慣行ではありません。要領は業務提携について、求人者・求職者にとって、求人・求職の結合可能性を高める積極的意義を有するものであり、労働条件等の明示、個人情報の取扱い等について、単一の職業紹介事業者等により職業紹介がなされる場合と同様に法にしたがって行われることを前提として認めて差し支えないと述べています(出典: 同要領 第9の7(1)ロ)。
この一文の後半が実務上の要点です。認められる条件は「単独で紹介するときと同じ水準で法を守ること」であって、複数社が関わるからといって義務が薄まったり、どこかの会社に丸投げできたりするわけではない、という立て付けになっています。
送客が生まれる場面
送客が必要になるのは、手元にある求職者や求人を自社では成約まで持っていけないとわかったときです。典型的には次の4つの場面があります。
- 担当領域の外だった:ITエンジニア中心の会社に、看護師や施工管理の求職者が登録してくる。求人を持っていないため、自社では動かしようがない。
- キャパシティを超えている:登録は増えているがキャリアアドバイザーの手が足りず、面談まで数週間空いてしまう。待たせているうちに他社で決まる。
- 条件が噛み合わない:希望勤務地や年収レンジが自社の求人と合わない。求職者の希望自体は現実的で、別の会社なら合う求人がある。
- 求人はあるが求職者がいない:求職者ではなく求人のほうを提供する送客。要領の定義も「求人又は求職」の双方を対象にしている。
いずれも、放置すれば登録を受けたコストがそのまま損失になる場面です。実際、厚生労働省の集計では、事業報告書を提出した有料職業紹介事業所30,561か所のうち、その年度に就職実績があったのは13,946か所でした(出典: 厚生労働省「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」令和8年3月31日公表)。許可を持ちながら決定が立っていない事業所が半数近くあるという数字は、裏を返せば「求職者を抱えているが動かせていない会社」と「求人はあるが人がいない会社」が同時に大量に存在しているということでもあります。送客が業界の関心を集める背景はここにあります。
送客の法的な位置づけ
送客を設計するうえで最初に押さえるべきは、「あっせん」を誰が行うのかです。職業安定法4条1項は職業紹介を「求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあつせんすること」と定義し、要領はこの「あっせん」を求人者と求職者との間をとりもって雇用関係の成立が円滑に行われるように第三者として世話することと説明しています(出典: 同要領 第1の1(1))。
業務提携では、求職を受理する会社とあっせんを行う会社が分かれます。要領も「業務提携による職業紹介においては、概念上、求人受理及び求職受理は複数の職業紹介事業者等で行われることがある」と明記しています(出典: 同要領 第9の7(1)イ)。この構造を先に頭に入れておくと、あとに出てくる義務の割り振りが素直に読めます。
業務提携(送客)による職業紹介の流れ
- 1送客元(A社)求職の申込みを受理する
求職者から求職を受理するのはA社。労働条件等の明示義務(法5条の3)も、原則としてここで直接受理したA社が負う。
- 2送客元(A社)提携内容を明示し、同意を得たうえで提供する
提携先の名称・所在地・許可番号や手数料に関する事項などを事前に明示し、求職者が提供に同意した場合に限って提供できる。不同意なら提携の対象としてはならない。
- 3送客先(B社)求人とマッチングし、あっせんする
「あっせん」=求人者と求職者の間をとりもって雇用関係の成立が円滑に行われるよう第三者として世話すること。B社が自社の求人へつなぐ。
- 4送客先(B社)求人企業から手数料を徴収する
手数料を徴収するのは、あっせん行為を行った職業紹介事業者。額はB社が届け出た手数料表の範囲内に収まる。A社への支払いは、この後の配分で行う。
送客する側にも許可が必要か
ここは判断が分かれやすい論点です。要領は、自ら求人・求職を受理せず、求人・求職の申込みを勧誘する業務、職業紹介事業者に求人・求職を全数送付する業務のみを行うことは、職業紹介に該当しないとしています(出典: 同要領 第1の1(2)イ)。文字どおり読めば、選別せず全数を送るだけの業務は職業紹介にあたりません。
しかし、紹介会社が実際に行う送客はそうではありません。「この求職者はA社よりB社が合いそうだ」と判断して送り先を選ぶ行為は「選別」です。要領は、求職者に関する情報について当該者の判断により選別した提供相手に対してのみ提供を行い、又は当該者の判断により選別した情報のみ提供を行うことを事業として行う場合には職業紹介事業の許可等が必要である、と明示しています(出典: 同要領 第1の1(4)ロ(イ)①)。加えて、業務提携を実施しうる事業者について要領は、法の規定により許可を受けていること等により適法に職業紹介事業を行う職業紹介事業者に限られると述べています(出典: 同要領 第9の7(2))。
実務上の結論としては、送客する側もされる側も、許可を受けた職業紹介事業者であることを前提に設計するのが安全です。提携の話が来たら、まず相手の許可番号を確認する。これが最初の一手になります。許可そのものの要件は有料職業紹介事業とは|許可要件・申請手続き・年次義務と開業までの全ステップにまとめています。
義務は「関わった全社」にかかる
業務提携では、義務が送客先だけに集中するわけではありません。要領は、求人等に関する情報の的確な表示の義務(法5条の4第1項・第3項)は業務提携による職業紹介の過程で求人等に関する情報を取り扱う全ての職業紹介事業者等に課されるとし、求職者の個人情報の取扱いに係る義務(法5条の5)と守秘義務等(法51条)も同様に過程で取り扱う全ての職業紹介事業者等に課されるとしています(出典: 同要領 第9の7(4)(5)イ)。一方で、求職者に対する労働条件等の明示(法5条の3)は原則として求職の申込みを求職者から直接受理した職業紹介事業者等が履行すべきものとされています(出典: 同要領 第9の7(3))。
| 論点 | 自社単独で紹介する場合 | 業務提携(送客)による場合 |
|---|---|---|
| あっせん | 自社が行う | 送客先が行う。求職受理と分かれるのが構造上の特徴 |
| 労働条件等の明示(法5条の3) | 自社が行う | 原則として求職を直接受理した側(送客元)。廃業等で履行できない場合は提携先が負う |
| 情報の的確な表示(法5条の4) | 自社が負う | 情報を取り扱う全社が負う |
| 個人情報・守秘義務(法5条の5・51条) | 自社が負う | 過程で取り扱う全社が負う |
| 手数料の徴収(法32条の3) | 自社が徴収 | あっせんを行った事業者が徴収し、事後的に配分する |
| 求人求職管理簿・事業報告(法32条の15・32条の16) | 自社が備え、提出する | 提携する事業者間で取り決めた一者が履行する |
最後の行は運用でこぼれやすいところです。要領は、求人求職管理簿の備付に関する義務と、職業紹介事業報告および人材サービス総合サイトを利用した情報提供の義務について、業務提携を行う職業紹介事業者の間で取り決めた一者が履行することとしています(出典: 同要領 第9の7(9))。「取り決めた一者」なので、決めていなければ誰も履行していない状態になり得ます。提携契約を結ぶ段階で明文化しておくべき事項です。年次の事業報告そのものの書き方は職業紹介事業報告書の書き方|はじめてでも迷わない様式第8号の記入項目で扱っています。
送客手数料の仕組みと相場
送客手数料は、法令が定める新しい種類の手数料ではありません。要領は、業務提携による職業紹介において有料職業紹介事業における手数料を徴収するのは、あっせん行為を行う職業紹介事業者であるとし、その額は当該あっせんを行う職業紹介事業者の手数料の定めの範囲内となるとしています(出典: 同要領 第9の7(8)イ)。つまり求人企業に請求書を出すのは送客先であり、料率も送客先が厚生労働大臣に届け出た手数料表に従います。
では送客元は何を受け取るのか。要領はそのすぐ後で、徴収した手数料を有料職業紹介事業者間で事後的に配分すること(例えば、あっせんを行う有料職業紹介事業者が徴収した手数料のうち一定額に相当する額を求人・求職を提供した有料職業紹介事業者に支払うこと)は差し支えないと述べています(出典: 同要領 第9の7(8)ロ)。実務でいう送客手数料は、この「事後的な配分」にあたります。
① 求人企業 → 送客先(あっせんを行った事業者)
紹介手数料を支払う
相場は理論年収の30〜35%。徴収するのはあっせん行為を行った職業紹介事業者であり、額はその事業者が届け出た手数料表の範囲内。
② 送客先 → 送客元
徴収した手数料を事後的に配分する
「あっせんを行う有料職業紹介事業者が徴収した手数料のうち一定額に相当する額を、求人・求職を提供した有料職業紹介事業者に支払うこと」は差し支えないとされている。これが実務でいう送客手数料。
③ 求職者 → いずれの事業者にも
手数料は発生しない
有料職業紹介事業者は求職者から手数料を徴収してはならない(芸能家・家政婦(夫)等の経過措置を除く)。送客でも例外ではない。
配分の割合を示す公的統計は確認できない。厚生労働省が公表しているのは業界全体の平均であり、提携ごとの分け方は当事者間の契約で決まる。
相場はいくらか
率直に言うと、送客手数料の配分割合について、公表された統計や相場データは確認できませんでした。「送客手数料の相場は◯%」と言い切っている情報を見かけたら、その根拠がどこにあるのかを確かめることをおすすめします。当事者間の契約で決まる金額であり、公的に集計されている性質のものではありません。
確かなのは、配分の母数になる手数料の水準のほうです。人材紹介の手数料相場は理論年収の30〜35%で、専門職・ハイクラスでは50%以上になるケースもあります(出典: doda DSJ/マンパワーグループ・2026年8月時点)。また厚生労働省の集計では、常用就職1件あたりの手数料は約103万円でした(出典: 厚生労働省「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」令和8年3月31日公表。全業種・全職種の平均値であり、特定の職種の相場ではありません)。送客の分配は、この金額を送客先と送客元でどう分けるか、という話になります。
配分を決める4つの変数
公的な相場が無い以上、自社で条件を組み立てるしかありません。交渉の軸になるのは、それぞれがどこまで工数とリスクを負うかです。
- 求職者側の工数をどこまで担うか:登録受付だけで渡すのか、面談・書類整備・志向の把握まで済ませて渡すのかで、送客先が省ける工数が変わります。
- 選考中のフォローを誰が持つか:日程調整や面接後のフォローを送客元が続けるのか、引き渡し後は送客先に一本化するのか。二重にフォローすると求職者が混乱します。
- 返戻金が発生したときの負担:早期離職で求人企業へ返金が生じた場合、配分済みの送客手数料をどう精算するか。ここを決めずに始めると必ずもめます。返戻金制度そのものの設計は手数料の記事を参照してください。
- 支払いのタイミング:送客先が求人企業から入金を受けた後の配分が基本になります(要領も「事後的に配分」と表現しています)。入社時点なのか入金後なのかを明記します。
求職者から受け取ってはならない
配分の設計をどう組むにせよ、越えてはならない線があります。有料職業紹介事業者は、求職者からは手数料を徴収してはなりません(職業安定法32条の3第2項。芸能家、家政婦(夫)、配ぜん人、調理師、モデル、マネキンの職業に係る求職受付手数料の経過措置を除く)。さらに同条1項は、法令が認める場合を除き職業紹介に関し、いかなる名義でも、実費その他の手数料又は報酬を受けてはならないと定めています(出典: 厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」第6の1(1))。
「いかなる名義でも」という文言は、名前を変えれば規制を外れる余地が無いことを意味します。「送客手数料」「業務提携料」「情報提供料」といった呼称にしても、職業紹介に関して受け取る金銭であることに変わりはありません。同条1項または2項に違反した場合、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です(職業安定法65条2号)。
送客を始める前に決めること
送客でもっとも事故が起きやすいのは、金額ではなく求職者の同意です。要領は、業務提携に際して求職を他の職業紹介事業者等に提供しようとする場合には、あらかじめ求職者に業務提携の内容を明示し、求職者が求職の提供に同意する場合に限って行うこととし、求職者が求職の提供に同意しない場合には業務提携の対象としないこととしなければならないとしています(出典: 同要領 第9の7(5)ハ)。
送客を始める前に確認する6点
提携先が適法に職業紹介事業を行っているか
業務提携を実施しうるのは、許可を受けている等により適法に職業紹介事業を行う事業者に限られる。許可番号を確認する。
求職者から提供の同意を得ているか
提携内容を事前に明示し、同意した場合に限り提供できる。不同意の求職者は提携の対象としてはならない。
一度に意思確認する提携先を10以内に収めているか
提携先ごとに同意・不同意を示せる方法であれば複数まとめて確認できるが、当面10以内とされている。
同意した求職と、それ以外を分類して管理しているか
提供に同意する求人・求職とそれ以外を分類して管理し、個人情報の適正管理により一層的確に対応することが求められる。
利用目的の明示に「提携先への提供」が入っているか
「職業紹介で求職者に開示の許諾を得た業務提携先に提供する際に使用するため」といった形で、収集時に目的を具体的に明示しておく。
管理簿と事業報告を誰が担うか決めているか
求人求職管理簿の備付、職業紹介事業報告と人材サービス総合サイトでの情報提供は、提携する事業者間で取り決めた一者が履行する。
何を明示するのか
「業務提携の内容」の中身も具体的に決まっています。求人を提供する場合の規定を求職にも準用する形で、次の事項を提携先ごとに明示することが求められます。
| 区分 | 明示する内容 |
|---|---|
| 事業者の特定 | 提携先の事業所の名称及び所在地、許可番号等 |
| 取扱いの条件(法32条の13・則24条の5) | 取扱職種の範囲等/手数料に関する事項/苦情の処理に関する事項/個人情報の取扱いに関する事項/返戻金制度に関する事項/違約金等に関する事項 |
| 実績(法32条の16・則24条の8第3項) | 就職者の数と、うち無期雇用の者の数/無期雇用の就職者のうち就職後6か月以内に離職した者の数/同じく該当するかどうか明らかでない者の数/取扱職種ごとの常用就職1件当たりの平均手数料率 |
| 必要に応じて | 職業紹介事業の実施地域、就職件数の多い職種、年齢、賃金及び雇用形態等 |
表の「違約金等に関する事項」と「取扱職種ごとの常用就職1件当たりの平均手数料率」は、令和7年4月1日から追加された明示事項です(出典: 同要領 第9の7(5)ロ)。以前に提携の書式を作ったまま使い回している場合、この2項目が抜けている可能性があります。
同意の取り方と「10以内」の制限
同意は提携先ごとに取ります。要領は、求職者が提携先ごとに同意又は不同意の意思を示すことができるような方法であれば、一度に複数の提携先について、同意又は不同意の意思を確認することができるとしたうえで、ただし、当面、一度に意思確認する提携先は10以内とすることと付しています(出典: 同要領 第9の7(5)ハ)。「提携先30社に一括で同意」という設計は取れない、ということです。
同意の質についても要件があります。要領は本人の同意を得る際に、同意を求める事項について、求職者が適切な判断を行うことができるよう、可能な限り具体的かつ詳細に明示すること、求職者の自由な意思に基づき、本人により明確に表示された同意であることを求めており、単に利用規約を示した上で、求職者がサービスの利用を開始するのみでは本人の同意の意思が明確に表示されたとまではいえないとしています(出典: 同要領 第9の4(1)ヘ)。登録フォームの規約に一文入れておけば足りる、という運用は成り立ちません。
あわせて、個人情報の収集時点の手当ても必要です。要領は業務の目的を明示する例として、「職業紹介で求職者に開示の許諾を得た業務提携先に提供する際に使用するため」という書き方を挙げています(出典: 同要領 第9の4(1)イ)。送客を行う予定があるなら、登録時の利用目的にこの趣旨を含めておくのが筋です。なお、求人者に対して求職者の個人データを示す行為は個人情報保護法27条1項の「第三者提供」に該当するとされており(出典: 同要領 第9の4(1)ホ)、提携先の紹介会社へ渡す場合も第三者提供であることに変わりはありません。
同意した相手は、原則として受理を断れない
送客先の側にも見落としやすい規律があります。要領は、事業者が業務提携について明示し、求人者または求職者が提携先への提供に同意した場合、当該提携先が当該求人又は求職を受理しないことは原則として認められないとしています(例外は、法29条3項または法32条の12第1項により業務の範囲の限定を受けている場合等、法において不受理が認められている場合/出典: 同要領 第9の7(6))。「同意は取ったが、送客先が気に入った人だけ受ける」という運用は想定されていない、ということです。
送客元の側にも努力義務があります。適格紹介(法5条の8)の努力義務は業務提携に関わる全ての事業者に課され、送客元には適格求人を有していると見込まれる提携先を選定することが求められます(出典: 同要領 第9の7(7))。手数料の配分条件が良いという理由だけで送り先を決めることは、この趣旨に反します。
相互送客をどう設計するか
相互送客とは、提携する紹介会社どうしが双方向に求職者や求人を提供し合うことです。片方向の送客が「自社で扱えない求職者を渡す」だけなのに対し、相互送客では自社も受け手になります。要領の概念図も、提携先が複数あり、求人・求職が双方向に動きうる形で描かれています(出典: 同要領 第9の7(1)イ)。
相互にすることの利点は明快で、渡すだけでは自社の決定数が増えないという点にあります。受け手になれば、自社にいない求職者で自社の求人を埋められます。特化領域が異なる会社どうしほど噛み合いやすく、たとえば「ITに強い会社」と「医療・介護に強い会社」の組み合わせは、双方の取りこぼしが互いの主戦場になります。
始める前に潰しておく3つのリスク
- 求職者の体験が二重になる:送客元と送客先の両方が連絡を取り続けると、求職者は同じ話を二度させられます。引き渡し後の窓口をどちらが持つのかを、求職者にわかる形で伝えておきます。
- 求人の重複と競合:提携先と同じ求人企業を担当していると、同一求人に双方から推薦が入ることがあります。求人企業側の心証を損ねるため、扱う求人の重複を事前に突き合わせます。
- 提携先の品質が自社の評判になる:求職者にとっては「最初に登録した会社が紹介してくれた会社」です。提携先の対応が雑なら、その評価は送客元にも返ってきます。要領が明示事項として就職後6か月以内の離職者数まで挙げているのは、こうした品質を見て提携先を選べるようにする趣旨と読めます。
3つ目に関連して、苦情処理の窓口も決めておくべき項目です。要領は、職業紹介事業者は職業安定機関および他の職業紹介事業者と連携を図りつつ、あっせんを行った後の苦情を含めて迅速・適切に対応することとし、そのための体制の整備に努めることとしています(出典: 同要領 第9の5(3))。提携先で起きたトラブルの一次受けを誰がするのかは、契約段階で決めておくのが実務的です。
送客を管理する
ここまでのルールは、記録が残っていなければ守ったことを示せません。要領は業務提携の留意点として、職業紹介事業者等は、提携先への提供に同意する求人・求職とそれ以外の求人・求職を分類して管理しておくとともに、個人情報の適正な管理について、より一層、的確に対応しなければならないと述べています(出典: 同要領 第9の7(5)ニ)。
これは運用の言葉に直すと、求職者1人ひとりに「どの提携先への提供に同意しているか」が紐づいた状態を保つということです。同意はいつ取ったのか、提携先ごとにどの意思表示だったのか、いつ誰に提供したのか。ここが担当者ごとのスプレッドシートやメールに散っていると、退職や異動のたびに欠落し、後から遡って確認できなくなります。
- 同意の範囲:提携先ごとの同意・不同意と、その取得日。撤回された場合はその日付も。
- 提供の履歴:どの求職者を、いつ、どの提携先に提供したか。
- 選考の進捗:提供後に送客先で選考がどこまで進んだか。決定に至ったかどうか。
- 配分の記録:成約時にいくら受け取ったか、返戻が発生した場合の精算はどうしたか。
- 管理簿と報告の担当:求人求職管理簿と事業報告を、提携先との間でどちらが履行することにしたか。
送客を始めると、管理すべき情報が「自社の中で完結しない」状態に変わります。同意の範囲という、それまで存在しなかった軸が求職者データに増え、成約の売上も自社単独ではなくなります。送客を検討する段階が、求職者・求人・選考の記録を1か所に寄せておく実務的な理由になるのはこのためです。
Emproは人材紹介に特化したCRM/MAとして、求職者・求人・選考ステータスを同じ基盤の上で管理できるよう設計しています。日々の記録がそのまま同意の履歴や実績の集計につながる状態を作ることが、提携を増やしても運用が破綻しない前提になります(対応範囲は機能一覧を参照)。システムの比較軸そのものを整理したい場合は人材紹介システムの選び方|CRM/MAとの違い・比較の4軸・失敗しない導入手順が入口になります。
よくある質問
Q. 人材紹介における送客とは何ですか?
A. 自社で受理した求職者や求人を、他社の人材紹介会社へ提供し、その会社にあっせんしてもらうことです。法令上は「職業紹介事業者間の業務提携」として整理されており、自ら受理した求人・求職をあらかじめ特定された他の職業紹介事業者に提供し、その事業者があっせんを行うことを指します(出典: 厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」第9の7(1))。
Q. 送客手数料の相場はどのくらいですか?
A. 配分割合の公的な統計や相場データは確認できません。送客手数料は独立した手数料ではなく、あっせんを行った事業者が求人企業から徴収した手数料を事後的に配分するものとされており(出典: 同要領 第9の7(8))、割合は提携ごとの契約で決まります。母数となる紹介手数料の相場は理論年収の30〜35%です(出典: doda DSJ/マンパワーグループ・2026年8月時点)。
Q. 相互送客とは何ですか?
A. 提携する人材紹介会社どうしが、双方向に求職者や求人を提供し合うことです。片方向の送客では自社の決定数が増えませんが、受け手にもなることで自社にいない求職者で自社の求人を埋められます。特化領域が異なる会社どうしほど噛み合いやすく、双方の取りこぼしが互いの主戦場になります。
Q. 送客と通常の紹介の違いは何ですか?
A. あっせんを行う主体が分かれる点です。通常は求職を受理した会社がそのままあっせんしますが、送客では求職を受理した会社と、求人とマッチングしてあっせんする会社が別になります。手数料を徴収するのはあっせんを行った事業者で、労働条件等の明示は原則として求職を直接受理した事業者が担います(出典: 同要領 第9の7(3)(8))。
Q. 送客に求職者の同意は必要ですか?
A. 必要です。あらかじめ求職者に業務提携の内容(提携先の名称・所在地・許可番号、手数料や返戻金制度に関する事項など)を明示し、求職者が提供に同意する場合に限って行うこととされ、同意しない場合は業務提携の対象としてはなりません。一度に意思確認する提携先は当面10以内とされています(出典: 同要領 第9の7(5)ハ)。
