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法令・基礎知識

職業安定法違反とは|紹介会社が踏みやすい違反類型と罰則・お祝い金規制

執筆:宮崎将成(株式会社エボルグ 代表取締役

公開日:2026-09-25 ・読了目安:13

職業安定法違反とは、職業紹介・労働者の募集・労働者供給について定めた職業安定法(昭和22年法律第141号)と、その施行規則および指針に反する行為のことです。人材紹介会社で問題になる類型は、①入口(無許可営業・職業紹介責任者の不選任など)②求人・求職者に示す情報(虚偽の広告や虚偽の条件の提示、労働条件の明示漏れ)③求職者の扱い(求職者からの手数料徴収、お祝い金による求職申込みの勧奨、転職勧奨、個人情報の取扱い)④記録・報告(帳簿の不備、事業報告書の未提出)の4つに整理できます。制裁は刑事罰(63条〜66条。67条の両罰規定により法人にも罰金刑)と行政処分(改善命令・事業停止命令・許可の取消し・事業廃止命令)の2系統で、行政処分を受けた事業者名・処分内容・処分理由は厚生労働省と都道府県労働局のホームページで公表されます。実際に公表されている処分を見ると、もっとも多く現れるのは④で、事業報告書を出さないまま指導にも報告徴収にも応じなかった事業者に事業停止命令が出た例があります(兵庫労働局・2025年7月15日)。

「職業安定法違反」で検索する人の多くは、ニュースで見た事件の意味を知りたいのではなく、自社の運営が知らないうちに違反していないかを確かめたいのだと思います。ところが出てくる記事は条文の逐条解説か、無許可営業という極端な例に寄っていて、日々の業務のどこが危ないのかは書かれていません。

この記事は、職業安定法の違反を条文の並び順ではなく、紹介会社の業務のどこで発生するかで整理し直します。そのうえで、検索されることの多い「お祝い金は違法か」「違反するとどうなるか」に、指針の文言と実際に公表された行政処分の中身から答えます。

許可の要件・費用・申請手続きそのものは有料職業紹介事業とは|許可要件・申請手続き・年次義務と開業までの全ステップに、無許可営業の罰則は人材紹介に「免許」は必要?|免許・資格・許可の違いと無許可営業の罰則にまとめてあります。本記事は許可を取ったあとの運営で踏みやすい違反に重心を置きます。

職業安定法とは何を定めた法律か

職業安定法とは、職業紹介・労働者の募集・労働者供給について、誰がどのような条件で行えるか、その際に守るべきことは何かを定めた法律です(昭和22年法律第141号)。人材紹介という事業は、この法律にいう「職業紹介」——求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあつせんすること(4条1項)——にあたり、手数料または報酬を受けて行う場合は厚生労働大臣の許可が必要になります(30条1項)。

重要なのは、この法律が課しているのが許可の取得だけではないという点です。許可を受けたあとも、明示・記録・報告・求職者の扱いに関する義務が継続して課され、その多くに罰則または行政処分が結びついています。「職業安定法違反」という言葉が指す範囲は、無許可営業よりずっと広いということです。

人材紹介会社に課されている主な義務

有料職業紹介事業者に課される義務のうち、日常の業務に直接関わるものを条文とともに並べると次のようになります。ここに挙げたものが、そのまま違反になり得る場面の一覧でもあります。

場面義務の内容根拠条文
事業を始める有料の職業紹介事業を行うには厚生労働大臣の許可を受ける30条1項
事業所ごと職業紹介責任者を選任する32条の14
扱う職業港湾運送業務・建設業務に就く職業を求職者に紹介しない32条の11第1項
紹介するとき求職者に業務の内容・賃金・労働時間その他の労働条件を明示する5条の3第1項
情報を出すとき求人等に関する情報に虚偽・誤解を生じさせる表示をしない。正確かつ最新の内容に保つ措置を講じる5条の4第1項・第3項
求職者の情報業務の目的の達成に必要な範囲内で個人情報を収集・保管・使用し、適正に管理するために必要な措置を講じる5条の5
申込みの受理求人・求職の申込みは原則としてすべて受理する(受理しないことができる場合は各号に限定)5条の6・5条の7
手数料省令で定める額または届け出た手数料表に基づいて徴収する。求職者からは原則として徴収しない32条の3第1項・第2項
事前の明示取扱職種の範囲等・手数料に関する事項・苦情の処理に関する事項などを求人者と求職者に明示する32条の13
記録省令で定める帳簿書類を作成し、事業所に備えて置く32条の15
年次の報告事業所ごとの事業報告書を作成して提出する(毎年4月30日まで)32条の16第1項・施行規則24条の8第1項
情報の提供就職者数、無期雇用で就職した人のうち離職した人の数、手数料に関する事項などをインターネットで提供する32条の16第3項
秘密業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を、正当な理由なく漏らさない51条1項
労働争議同盟罷業または作業所閉鎖が行われている事業所に求職者を紹介しない34条(20条の準用)
※条文はe-Gov法令検索「職業安定法」および同「職業安定法施行規則」の現行条文にもとづきます。個別の行為が違反にあたるかどうかの判断は行政・司法が行うものであり、判断に迷う場合は管轄の都道府県労働局または弁護士に相談してください。

職業安定法違反になるのはどんな場合か

違反を条文の順に並べても、自社に当てはまるかどうかは判断できません。紹介会社の業務のどこで発生するかで割り直すと、4つの群になります。

A. 入口(許可・体制)

  • 厚生労働大臣の許可を受けずに有料の職業紹介事業を行う(30条1項)
  • スカウト行為・再就職支援を、許可を受けずに事業として行う
  • 事業所ごとの職業紹介責任者を選任していない(32条の14)
  • 港湾運送業務・建設業務に就く職業を紹介する(32条の11第1項)

B. 求人・求職者に示す情報

  • 虚偽の広告をし、または虚偽の条件を提示して職業紹介を行う(65条9号)
  • 求人等に関する情報に虚偽・誤解を生じさせる表示をする(5条の4第1項)
  • 求職者への労働条件の明示が欠ける・古い(5条の3第1項)
  • 取扱職種の範囲等・手数料・返戻金制度等を明示しない(32条の13)

C. 求職者の扱い

  • 求職者から手数料を徴収する(32条の3第2項・原則禁止)
  • お祝い金等の提供によって求職の申込みを勧奨する(指針第六9(3))
  • 自社の紹介で無期雇用に就職した人へ2年以内に転職を勧奨する(指針第六5(1))
  • 求職者の個人情報を目的の範囲外で使う・秘密を漏らす(5条の5・51条1項)

D. 記録・報告

  • 省令で定める帳簿書類を作成しない・備え置かない(32条の15)
  • 事業報告書を4月30日までに提出しない(32条の16第1項)
  • 人材サービス総合サイトへの情報提供を行わない(32条の16第3項)
  • 行政庁の報告徴収・立入検査に応じない(50条)
図1:職業安定法違反を、条文の並びではなく「紹介会社の業務のどこで起きるか」で4群に整理したもの。実務で最も多く行政処分として現れるのはDである(出典: e-Gov法令検索「職業安定法」/厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」令和8年7月31日から適用 第9・第12)

「知らずに踏む」のは入口ではなく運営中

AとBは、開業のときに一度調べれば意識に残ります。問題はCとDです。お祝い金の規制も、帳簿の備付けも、事業報告書の提出も、許可を取ったあとに毎日・毎年発生する義務であり、担当者が代わったり件数が増えたりする過程で静かに欠けていきます。後述する実際の行政処分も、この領域から出ています。

許可があっても紹介できない職業がある

見落とされやすいのが32条の11第1項です。有料職業紹介事業者は、港湾運送業務に就く職業と建設業務に就く職業を求職者に紹介してはならないと定められています。許可の有無ではなく職業そのもので線が引かれているため、「許可があるからどの求人でも扱える」という理解のままだと踏みます。この違反は64条4号の対象で、無許可営業と同じ法定刑です。

許可の要否は「名前」ではなく「行為の実態」で決まる

厚生労働省の業務運営要領は、許可が必要な行為の範囲を実態で判断すると明示しています。求人者に紹介するため求職者を探索したうえで就職するよう勧奨し、これに応じて求職の申込みをした者をあっせんするいわゆるスカウト行為を事業として行う場合は、職業紹介事業の許可等が必要であり、アウトプレースメント業のうち職業紹介を行うものも同様とされています。さらに、求人・求職の情報を自らの判断で選別して提供する、あるいは提供相手に応じて加工して提供する行為を事業として行う場合も、その判断が自動的に行われているかどうかにかかわらず許可等が必要とされています(出典: 厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」令和8年7月31日から適用 第9 職業紹介事業の運営 (5))。「マッチングサイト」「スカウト支援」といった呼び方は、許可の要否とは関係がないということです。

運営中に踏みやすい違反と法定刑

許可を持っている事業者が実際に触れやすい罰条だけを抜き出すと、次のようになります。無許可営業(64条1号)と両罰規定(67条)を含む罰則の全体像は人材紹介に「免許」は必要?にまとめてあるため、ここでは繰り返しません。

行為罰条法定刑
省令で定める額を超えて手数料を受けた、届出をせずに届出制手数料を徴収した等(32条の3第1項・第2項違反)65条2号6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
虚偽の広告をし、または虚偽の条件を提示して職業紹介を行った65条9号6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
労働条件が法令に違反する工場事業場等のために職業紹介を行った65条11号6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
港湾運送業務・建設業務に就く職業を紹介した(32条の11第1項違反)64条4号1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
帳簿書類を作成せず、事業所に備えて置かず、または虚偽の帳簿書類を作成した(32条の15違反)66条6号30万円以下の罰金
行政庁の報告徴収に応じず、または虚偽の報告をした(50条1項)66条9号30万円以下の罰金
立入検査を拒み、妨げ、忌避した(50条2項)66条10号30万円以下の罰金
業務上知り得た人の秘密を漏らした(51条1項違反)66条11号30万円以下の罰金

表を眺めて気づくのは、罰金30万円以下の群に「記録と報告」が集まっていることです。金額は小さく見えますが、これらは同時に行政処分の理由にもなり、そちらのほうが事業に効きます。その構造は後段で扱います。

※法定刑の表記は現行の職業安定法にもとづきます。「懲役」と書かれた解説は、懲役・禁錮を拘禁刑へ一本化した刑法改正(令和7年6月1日施行)より前の表記です。求人票の明示義務と虚偽表示の実務は求人票の書き方・テンプレート、手数料の枠組みは人材紹介の手数料相場で扱っています。

お祝い金・転職勧奨の規制はどこまで及ぶか

「就職お祝い金」などの名目で求職者に金銭等を提供して求職の申込みの勧奨を行うことは、2021年4月1日から職業安定法の指針で禁止されています。指針の文言は次のとおりです。求職の申込みの勧奨は「職業紹介事業の質を向上させ、これを訴求することによって行うべきものであり、職業紹介事業者が求職者に金銭等を提供することによって行うことは好ましくなく、お祝い金その他これに類する名目で社会通念上相当と認められる程度を超えて金銭等を提供することによって行ってはならない」(職業安定法指針〔平成11年労働省告示第141号〕第六9(3))。

あわせて、同じ指針は自社の紹介により就職した者(期間の定めのない労働契約を締結した者に限る)に対し、就職した日から2年間、転職の勧奨を行ってはならないと定めています(第六5(1))。この2つはセットで導入されたもので、厚生労働省はその理由を「職業紹介事業者が、自ら紹介した就職者に対し転職したらお祝い金を提供するなどと持ちかけて転職を勧奨し、繰り返し手数料収入を得ようとする事例があり、このような行為は、労働市場における需給調整機能を歪め、労働者の雇用の安定を阻害する行為である」と説明しています(出典: 厚生労働省リーフレット「『就職お祝い金』などの名目で求職者に金銭等を提供して求職の申し込みの勧奨を行うことを禁止しました」令和3年3月)。

指針が禁止していること

  • 職業紹介事業者が、お祝い金等で求職の申込みを勧奨する

    「お祝い金その他これに類する名目で社会通念上相当と認められる程度を超えて金銭等を提供することによって行ってはならない」(指針第六9(3))。2021年4月1日から

  • 自社の紹介で無期雇用に就職した人に、2年間は転職を勧奨する

    「当該就職した日から2年間、転職の勧奨を行ってはならない」(指針第六5(1))

  • 求人メディア等が、労働者になろうとする人にお祝い金等を提供して利用を勧奨する

    募集情報等提供事業を行う者にも同じ内容の規定が置かれた(指針第八5(3))。2025年4月1日から

この指針の名宛人ではないもの

  • 求人企業が自社の採用にあたって支払う入社祝い金・支度金

    上記の指針が名宛人としているのは職業紹介事業者と募集情報等提供事業を行う者。求人企業が自らの労働者に支払う金銭は、この規定の対象ではない

  • 求人企業が支払う手数料(紹介手数料)

    職業紹介事業者が求人者から受け取る手数料は32条の3の枠組みの話であり、お祝い金規制とは別の論点

右側は「規制がない」という意味ではなく、この指針が名宛人としていないという意味。景品表示法など他の法令の適用は別に判断される。

図2:お祝い金規制が禁止しているのは「金銭等を提供することによって求職の申込みの勧奨を行うこと」であり、名宛人は職業紹介事業者と募集情報等提供事業を行う者(出典: 職業安定法指針〔平成11年労働省告示第141号〕第六5(1)・9(3)、第八5(3)/厚生労働省「就職お祝い金などの名目で求職者に金銭等を提供して求職の申し込みの勧奨を行うことを禁止しました」/令和6年厚生労働省告示第318号)

禁止されているのは「金銭の提供」ではなく「それを手段とする勧奨」

条文の形を丁寧に読むと、禁止の対象は求職の申込みの勧奨を金銭等の提供によって行うことであって、金銭を渡す行為そのものが一律に禁止されているわけではありません。しかも「社会通念上相当と認められる程度を超えて」という限定が付いています。ここから逆算すると、求職者を集める手段としてお祝い金を訴求する設計は明確に外れる一方、個別のケースでどこまでが「相当」かは指針の文言だけでは決まりません。金額の基準は示されていないため、判断に迷う設計は事前に労働局へ確認するのが安全です。

2025年1月からは「許可の条件」になった

この規制の効き方は2025年に一段変わりました。2025年1月1日から、転職勧奨の禁止とお祝い金等の提供の禁止が、職業紹介事業の許可条件に追加されています。同日以降の許可、および許可有効期間の更新に際して、この2点が許可の条件として付されます(出典: 厚生労働省リーフレット「金銭等提供・転職勧奨禁止の職業紹介事業許可条件化について」)。

許可条件になったことの意味は小さくありません。職業安定法32条の9第1項3号は、許可の条件に違反したときを許可の取消し事由として挙げており、同条2項により事業停止命令の対象にもなります。指針違反は従来から行政指導の根拠でしたが、許可条件になったことで、取消し・停止という重い処分に直結する経路ができたことになります。

2025年4月からは求人メディア側にも同じ規制が及ぶ

2025年4月1日には、同じ内容の規定が募集情報等提供事業を行う者にも置かれました。労働者になろうとする者に対する募集情報等提供事業の利用の勧奨について、お祝い金その他これに類する名目で社会通念上相当と認められる程度を超えて金銭等を提供することによって行ってはならない、というものです(指針第八5(3)。令和6年厚生労働省告示第318号により追加、令和7年4月1日から適用)。求人メディアとの併営や送客の設計をしている場合は、こちらの適用も併せて確認する必要があります。

※求人企業が自社の採用にあたって支払う入社祝い金・支度金は、上記の指針が名宛人としている職業紹介事業者・募集情報等提供事業を行う者への規制とは別の話です。ただし「規制がない」という意味ではなく、表示の内容によっては景品表示法など他の法令の適用があり得ます。自社のスキームが指針の対象になるかどうかは、契約関係と金銭の流れの実態で判断されるため、所轄の労働局に確認してください。

違反するとどうなるか——罰則と行政処分は別系統

「違反するとどうなるか」の答えは1つではありません。職業安定法の制裁は、刑事罰と行政処分という別々の系統で用意されています。罰則が定められている違反でも、実際に事業者の身に起きるのはほとんどの場合まず行政処分のほうです。

系統1:刑事罰(63条〜66条)

重い順に63条・64条・65条・66条の4段。さらに67条の両罰規定により、従業者が業務に関して違反したときは行為者を罰するほか、法人にも各本条の罰金刑が科される。

適用は捜査・司法の手続によるため、日常的に発動するものではない。実務で先に起きるのは右の系統2である。

系統2:行政処分(32条の9・48条の3)

  • 48条の2指導・助言

    業務の適正な運営を確保するために必要な指導および助言

  • 48条の3第1項改善命令

    法違反を起こすような運営方法そのものの改善を命じる

  • 32条の9第2項事業停止命令

    期間を定めて事業の全部または一部の停止を命じる

  • 32条の9第1項許可の取消し

    その事業所で事業を続けさせることが適当でない場合に行う

実務でいちばん重いのは、処分そのものより後に残るもの

許可を取り消されると、その日から5年を経過するまで許可の欠格事由に該当し、取消しの原因となった事項が発生した当時の役員も同じく5年間、欠格事由に該当する(32条5号・6号)。あわせて、行政処分を行った事業者名・処分内容・処分理由は、厚生労働省と都道府県労働局のホームページで公表される。

図3:職業安定法の制裁は刑事罰と行政処分の2系統。行政処分は指導・助言から段階を踏むのが通例で、許可の取消しか事業停止かは違法性の程度によって判断される(出典: e-Gov法令検索「職業安定法」32条・32条の9・48条の2・48条の3・63条〜67条/厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」令和8年7月31日から適用 第12 違法行為による罰則、行政処分等)

行政処分は4種類ある

厚生労働省の業務運営要領は、法に違反する行為があった場合の行政処分を4つに整理しています。許可の取消し(32条の9第1項)、事業廃止命令(33条の3第2項において準用する32条の9第1項)、事業停止命令(32条の9第2項)、改善命令(48条の3第1項)です。許可の取消しまたは事業廃止命令を行うときは聴聞が、事業停止命令または改善命令を行うときは弁明の機会の付与が必要とされています(出典: 厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」令和8年7月31日から適用 第12 違法行為による罰則、行政処分等 2(1))。

同要領は、取消しと停止の使い分けについても書いています。事業停止命令は「当該事業所において事業を引き続き行わせることが適当でないとまではいえないような場合」に、改善を図らせるため、また一定の懲戒的な意味において行うもので、要件は許可の取消しと同一だが、どちらを行うかは違法性の程度等によって判断する、とされています。改善命令は「違法行為そのものの是正を図るのではなく、法違反を起こすような職業紹介事業の運営方法そのものの改善を行わせるもの」です。

処分は必ず公表される

行政処分を行った職業紹介事業者については、事業者名等が公表されます。同要領は、これを求職者および求人者への情報提供を目的とするものと位置づけたうえで、公表内容として公表日・事業者情報・処分内容・処分理由の4点を挙げ、厚生労働省および管轄の都道府県労働局のホームページで行うとしています(同 第12 3)。求人者に対する勧告に従わなかった場合の公表(48条の3第3項)とは目的が異なる、という整理もあわせて示されています。

取消しの本当の重さは、その後の5年

許可の取消しで効くのは、その時点で事業ができなくなることだけではありません。職業安定法32条5号は、許可を取り消された者は取消しの日から5年を経過するまで許可の欠格事由に該当すると定めています。さらに6号により、取消しの原因となった事項が発生した当時に役員だった個人も、同じく5年間、欠格事由に該当します。法人を作り直しても、その役員が在籍する限り新たな許可は下りない、という設計です。刑事罰の罰金額よりも、この5年のほうが事業には重く効きます。

※事業報告書の提出義務(32条の16第1項)そのものを対象とする罰条は、職業安定法の罰則規定(63条〜66条)には置かれていません。しかし後述のとおり、未提出は行政処分の理由になります。「罰則がない=放置してよい」ではない、という点が本記事でもっとも注意してほしい箇所です。

実際に出ている行政処分の中身

厚生労働省は「職業紹介事業等に係る行政処分」という一覧を公開しています。2026年4月24日現在の版では、許可の取消し(32条の9第1項)が10件掲載されており、この一覧は取消し日から5年以内のものだけを載せる方式です。改善命令と事業停止命令は「現在実施中のもののみ掲載」とされ、同版では該当がありません。あわせて、この一覧には事業報告未提出に係る処分は含まれないという注記が付いています(出典: 厚生労働省「職業紹介事業等に係る行政処分」令和8年4月24日現在)。

事例1:事業報告書を出さず、指導にも報告徴収にも応じなかった(事業停止命令+改善命令)

兵庫労働局は2025年7月15日、有料職業紹介事業者2社に対し、職業安定法32条の9第2項に基づく職業紹介事業停止命令と、48条の3第1項に基づく職業紹介業務改善命令を行いました。公表された処分理由は3段構えです。①32条の16第1項の事業報告書について、令和5年4月1日から令和6年3月31日までの期間分を提出期限を過ぎても提出しなかった ②これに対する48条の2の指導に従わなかった ③50条1項に基づく報告を求めたにもかかわらず提出しなかった——これらにより職業安定法の規定に違反した、というものです。

処分の内容もそのまま公表されています。事業停止命令は「全ての職業紹介事業について、32条の16第1項の事業報告が提出されるまでの間、職業紹介事業を停止すること」、改善命令は当該期間分の事業報告書を提出すること。期間ではなく条件で停止が解ける形になっている点が特徴です(出典: 兵庫労働局「職業紹介事業者に対する事業停止命令及び職業紹介業務改善命令について」令和7年7月15日)。

この事例が示しているのは、罰則の重さと処分の起きやすさは別だということです。事業報告書の未提出そのものに罰条はありません。それでも、未提出のまま指導と報告徴収を放置すれば事業が止まります。書き方と提出の実務は職業紹介事業報告書の書き方|はじめてでも迷わない様式第8号の記入項目で扱っています。

事例2:役員の刑が確定して欠格事由に該当(許可の取消し)

厚生労働省は2026年4月24日、有料の職業紹介事業者1社について32条の9第1項1号に基づき許可を取り消したことを公表しました。処分理由は、法人の役員が拘禁刑以上の刑に処せられて刑が確定し、32条11号に規定する欠格事由に該当することとなったというものです(出典: 厚生労働省「有料の職業紹介事業の許可を取り消しました」令和8年4月24日)。

職業安定法32条1号は、拘禁刑以上の刑に処せられた者を欠格事由とし、11号は法人であって、その役員のうちに前各号のいずれかに該当する者があるものを欠格事由としています。つまり、紹介業務の中身とはまったく関係のない事由でも、役員の状態を通じて法人の許可が失われるということです。役員の変更や在籍状況を管理の対象に入れておく理由がここにあります。欠格事由の全体像は有料職業紹介事業とはで扱っています。

処分事例はどこで確認できるか

行政処分は、厚生労働省の職業紹介事業のページに置かれた「職業紹介事業等に係る行政処分」の一覧と、各都道府県労働局の報道発表資料で公表されます。前者は現在有効なものだけを載せる運用のため、過去にどんな理由で処分が出たかを調べたい場合は、労働局側の報道発表資料のほうが処分理由まで読めることが多くなります。自社の運営を点検するときは、条文よりもこちらを読むほうが具体的です。

※本節で紹介した処分は、いずれも厚生労働省または都道府県労働局が情報提供を目的として公表している資料にもとづきます。事業者名は出典先で確認できます。処分の有無や内容は時点によって変わるため、最新の状況は出典元をご確認ください。

直近の改正動向

「職業安定法 改正」で調べると2022年10月の法改正の解説が多く出てきますが、紹介会社の実務に効いた変更はその前後にも複数あります。法律・省令・指針・許可条件のどのレベルで課されているかによって違反したときの効き方が変わるため、レベルとセットで押さえるのが実務的です。

紹介会社の実務に効いた改正(施行日順)

  • 2021年4月1日指針

    お祝い金等の提供の禁止・転職勧奨の禁止

    職業紹介事業者に対し、お祝い金等による求職申込みの勧奨と、自社の紹介で無期雇用に就職した人への2年間の転職勧奨を禁止(指針第六5(1)・9(3))

  • 2022年10月1日法律

    求人等に関する情報の的確な表示の義務化ほか

    5条の4の新設(虚偽・誤解を生じさせる表示の禁止と、正確かつ最新に保つ措置)、求職者等の個人情報の取扱いルールの整備(5条の5)、求人メディア等を対象とする特定募集情報等提供事業の届出制の創設(令和4年法律第12号)

  • 2024年4月1日省令

    労働条件の明示事項の追加

    「業務の内容の変更の範囲」「就業の場所の変更の範囲」「有期契約の更新上限」が明示事項に加わった(職業安定法施行規則4条の2第3項)

  • 2025年1月1日許可条件

    お祝い金等の禁止・転職勧奨の禁止が許可条件に追加

    この日以降の許可・許可有効期間の更新には、上記2点が許可の条件として付される。違反は「許可の条件に違反したとき」として行政処分の対象になる(32条の9第1項3号)

  • 2025年4月1日省令・指針

    紹介手数料率の実績公開と違約金規約の明示

    取扱職種ごとの常用就職1件当たりの平均手数料率の実績を人材サービス総合サイトで公開(令和6年厚生労働省令第138号)。求人者に対する違約金規約の明示、および募集情報等提供事業を行う者へのお祝い金等の禁止の拡大(令和6年厚生労働省告示第318号)

図4:直近の改正動向。「法律・省令・指針・許可条件」のどのレベルで課されているかによって、違反したときの効き方が変わる(出典: 厚生労働省「令和4年職業安定法の改正について」/同「職業安定法に基づく省令及び指針の一部改正」/令和6年厚生労働省令第138号/令和6年厚生労働省告示第318号/厚生労働省リーフレット「金銭等提供・転職勧奨禁止の職業紹介事業許可条件化について」)。2026年9月時点で施行済みのもの

2025年4月から始まった手数料率の実績公開

直近でもっとも運用負荷が増えたのは、紹介手数料率の実績公開です。職業安定法施行規則24条の8第3項が改正され、32条の16第3項にもとづく情報提供の中に、取扱職種ごとの常用就職1件当たりの平均手数料率の実績が含まれることになりました(令和6年厚生労働省令第138号。令和7年4月1日から適用)。

厚生労働省のリーフレットは運用を次のように示しています。公開の対象は常用就職の実績が多い上位5職種で、常用就職とは4か月以上の有期または無期で雇用されることを指します。常用就職の実績が10件以下の職種は掲載不要です。平均手数料率は取扱職種ごとに、求人者から徴収した手数料の総額(常用就職全件分)÷求職者の予定年収の総額(常用就職全件分)で算出し、小数点第2位で四捨五入します。定額制で徴収している場合は、率に代えてその額を掲載できます。掲載のタイミングは職業紹介事業報告の提出後、速やかにとされています(出典: 厚生労働省リーフレット「紹介手数料率の実績の公開と違約金規約の明示が必要になります」LL061030需01)。

実務の観点で言うと、これは事業報告書の集計とほぼ同じデータを、もう一段細かい粒度(職種別)で出せという要求です。年度末にまとめて遡って集計する運用では、職種の割り当てが担当者ごとにぶれて数字が合わなくなります。料率そのものの決まり方は人材紹介の手数料相場|30〜35%の根拠と法的上限・理論年収・返戻金の実務で扱っています。

違約金規約の明示(2025年4月〜)

同じ2025年4月1日から、指針に違約金規約の明示が加わりました。職業紹介事業の利用に関連して求人者が負担する違約金等について、金額・発生する条件・解除方法を含む契約の内容を、分かりやすく明瞭かつ正確に記載した書面または電子メールその他の適切な方法であらかじめ明示する、というものです(指針第六9(4))。指針はさらに、口頭による説明や、ホームページの該当箇所を教示するだけの方法は「適切な方法」とはいえないとし、規約をスクロールで確認させて同意ボタンを押させる方式についても、求人者が同一文面を再読できない可能性があることから適切とはいえないと明記しています。契約フローの設計そのものに関わる要求です。

※本節は2026年9月時点で施行済みの内容にもとづきます。指針・省令は告示や省令の改正によって変わるため、最新の状況は厚生労働省の職業紹介事業のページと、職業紹介事業の業務運営要領でご確認ください。

違反を防ぐ社内体制の作り方

ここまで見てきた違反の多くは、悪意ではなく「見る人がいない」「記録が残っていない」「確認する日が決まっていない」の3つから生まれます。逆に言えば、防ぐ側もこの3つで組み立てるのが現実的です。

  • 誰が見るか——職業紹介責任者を機能させる32条の14は、苦情の処理、求人者の情報と求職者の個人情報の管理、求人・求職の申込みの受理と業務の運営および改善、職業安定機関との連絡調整を統括管理させるために責任者を選任せよ、と定めています。名義だけ置く運用はこの趣旨から外れます。要件と講習の実務は職業紹介責任者とはを参照してください。
  • 何を残すか——帳簿と明示の記録32条の15の帳簿書類(求人管理簿・求職管理簿・手数料管理簿)に加え、求職者に「どの時点でどの条件を示したか」が後から辿れる状態が前提になっています。苦情が来たときに経緯を再現できるかどうかが、指導で終わるか処分に進むかの分かれ目になります。
  • いつ確認するか——年次の締切を先に置く毎年4月30日までの事業報告書(32条の16第1項)、その後速やかに行う人材サービス総合サイトへの情報提供(32条の16第3項)、そして許可の有効期間の更新。この3つはカレンダーに固定できます。事例1が示したとおり、締切を落として指導も放置したときに事業が止まります。

記録が散っていること自体がリスクになる

帳簿の備付けも、事業報告書も、手数料率の実績公開も、要求されているのは日々の業務の中ですでに発生している事実の集計です。それが担当者ごとのスプレッドシートやメールに散っていると、年度末に1年分を遡ることになり、集計漏れと計算誤りが生まれます。事例1は、その遅れが指導への対応の遅れにつながった形でした。

Emproは人材紹介に特化したCRM/MAとして、求職者・求人・選考ステータスを同じ基盤の上で管理できるよう設計しています。日々の記録がそのまま実績の集計につながるため、年次の報告のために遡る作業が減ります(対応範囲は機能一覧を参照)。システムの比較軸そのものを整理したい場合は人材紹介システムの選び方が入口になります。

よくある質問

Q. 職業安定法違反になるのはどんな場合ですか?

A. 職業安定法とその施行規則・指針に反する行為が対象です。人材紹介会社では、①無許可営業や職業紹介責任者の不選任などの入口の違反 ②虚偽の広告・虚偽の条件の提示や労働条件の明示漏れ ③求職者からの手数料徴収、お祝い金による求職申込みの勧奨、転職勧奨、個人情報の取扱い ④帳簿の不備や事業報告書の未提出の4類型に整理できます。実際に公表される行政処分は④から出ることが多くなっています。

Q. 職業安定法に違反するとどうなりますか?

A. 刑事罰と行政処分の2系統があります。刑事罰は63条から66条に段階的に定められ、67条の両罰規定により法人にも罰金刑が科されます。行政処分は改善命令(48条の3第1項)・事業停止命令(32条の9第2項)・許可の取消し(32条の9第1項)・事業廃止命令の4種類で、事業者名・処分内容・処分理由が厚生労働省と都道府県労働局のホームページで公表されます。許可を取り消されると、その日から5年間は許可の欠格事由に該当し、当時の役員も同じく5年間欠格事由に該当します(32条5号・6号)。

Q. 入社祝い金・就職お祝い金は違法ですか?

A. 職業紹介事業者が、お祝い金その他これに類する名目で社会通念上相当と認められる程度を超えて求職者に金銭等を提供し、それによって求職の申込みの勧奨を行うことは、2021年4月1日から職業安定法の指針で禁止されています(指針第六9(3))。2025年1月1日からは同じ内容が職業紹介事業の許可条件にも追加され、2025年4月1日からは募集情報等提供事業を行う者にも同趣旨の規定が置かれました。なお、求人企業が自社の採用にあたって支払う入社祝い金は、この指針が名宛人としているものではありません。

Q. 求職者から手数料を取ってもよいですか?

A. 原則として認められていません。職業安定法32条の3第2項は、有料職業紹介事業者は求職者からは手数料を徴収してはならないと定めており、求職者の利益のために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときに限って例外が認められています。芸能家・モデル等の職業に係る求職受付手数料や、経営管理者・科学技術者・熟練技能者で年収700万円超の場合などが該当します。詳しくは人材紹介の手数料相場の記事で解説しています。

Q. 職業安定法違反の事例はどこで公表されますか?

A. 厚生労働省の職業紹介事業のページにある「職業紹介事業等に係る行政処分」の一覧と、各都道府県労働局の報道発表資料で公表されます。公表内容は公表日・事業者情報・処分内容・処分理由の4点です(厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」第12)。厚生労働省の一覧は現在有効なものだけを掲載する運用のため、処分理由まで確認したい場合は労働局側の報道発表資料が参考になります。

コンプライアンスは、記録が残っているかで決まる

Emproは人材紹介に特化したCRM/MAです。求職者・求人・選考ステータスを1つの基盤で管理でき、日々の記録がそのまま帳簿と年次報告の材料になります。

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