職種別の有効求人倍率(常用・パートタイムを含む、2025年平均)が最も高いのは建設躯体工事従事者の7.91倍で、保安職業従事者(警備員等)6.55倍、土木作業従事者6.24倍、建築・土木・測量技術者5.60倍が続きます。最新の2026年8月も建設躯体工事従事者が8.25倍で最高です。職業計は2025年平均で1.12倍、最も低いのは美術家・デザイナー等の0.17倍でした(出典: 厚生労働省「職業安定業務統計」「一般職業紹介状況(令和8年8月分)」)。ただし、倍率が高い職種ほど人材紹介に向くわけではありません。上位に並ぶ建設現場の作業職は、職業安定法32条の11により有料職業紹介では紹介できない求人が中心です。紹介会社が領域を選ぶときは、倍率に加えて手数料の単価と求人の母数をあわせた3軸で見ます。
「職種別の有効求人倍率」は、ハローワークで扱った求人と求職を職業ごとに割り算した、厚生労働省の公的統計です。転職や採用の難しさを測る物差しとしてよく引用されますが、人材紹介会社が「どの職種で事業をするか」を決める材料として読むと、表の上から順に選べばよいわけではないことが分かります。
本記事では、厚生労働省の職業安定業務統計から33職業の有効求人倍率と有効求人数を、賃金構造基本統計調査から平均年収を取り出し、1枚の表と図にまとめました。前半は最新の一覧と読み方の注意点、後半は倍率×手数料の単価×求人の母数の3軸で、紹介ビジネスとしての向き不向きを整理します。開業の手続きそのものは有料職業紹介事業とは|許可要件・申請手続き・年次義務と開業までの全ステップに、手数料率の相場と決め方は人材紹介の手数料相場にまとめています。本記事は「どの職種を扱うか」の判断だけを扱います。
職種別 有効求人倍率の一覧(2025年平均・2026年8月)
有効求人倍率とは、ハローワーク(公共職業安定所)に出ている月間有効求人数を月間有効求職者数で割った値で、求職者1人あたり何件の求人があるかを示す指標です。1倍を上回れば求人のほうが多く、企業から見て人が採りにくい状態、1倍を下回れば求職者のほうが多い状態を表します。厚生労働省が「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」として毎月公表しており、職業別の数値もそこに含まれます。
下の表(表1)は、職業安定業務統計の職業区分(中分類。内訳の無い管理的職業従事者と保安職業従事者は大分類)から当社が選んだ主要33職業について、2025年平均と最新の2026年8月の有効求人倍率、有効求人数、平均年収、そこから計算した手数料の理論値を並べたものです。倍率の高い順(2025年平均)に並べています。最新月の値は2026年8月分(令和8年10月2日公表)です。厚生労働省は職業別の数値を含む一般職業紹介状況を毎月公表しています。
| 順位(33職業中) | 職業(厚生労働省の職業分類) | 有効求人倍率 2025年平均 | 有効求人倍率 2026年8月 | 有効求人数(2025年・月平均) | 平均年収 | 手数料の理論値(年収×35%) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 建設躯体工事従事者※ | 7.91倍 | 8.25倍 | 19,300人 | 414.5万円 | 145万円 |
| 2 | 保安職業従事者 | 6.55倍 | 6.99倍 | 89,841人 | 372.4万円 | 130万円 |
| 3 | 土木作業従事者※ | 6.24倍 | 6.71倍 | 42,367人 | 435.2万円 | 152万円 |
| 4 | 建築・土木・測量技術者 | 5.60倍 | 5.71倍 | 59,057人 | 649.8万円 | 227万円 |
| 5 | 建設従事者(建設躯体工事従事者を除く)※ | 4.46倍 | 4.37倍 | 30,920人 | 489.2万円 | 171万円 |
| 6 | 機械整備・修理従事者 | 4.09倍 | 3.87倍 | 38,735人 | 538.9万円 | 189万円 |
| 7 | 介護サービス職業従事者 | 3.88倍 | 3.89倍 | 203,077人 | 387.6万円 | 136万円 |
| 8 | 電気工事従事者※ | 3.39倍 | 3.23倍 | 20,400人 | 628.1万円 | 220万円 |
| 9 | 生活衛生サービス職業従事者 | 3.15倍 | 3.13倍 | 32,865人 | 354.1万円 | 124万円 |
| 10 | 医療技術者 | 3.08倍 | 3.21倍 | 41,248人 | 459.9万円 | 161万円 |
| 11 | 保健医療サービス職業従事者 | 2.99倍 | 2.73倍 | 25,171人 | 340.5万円 | 119万円 |
| 12 | 社会福祉専門職業従事者 | 2.67倍 | 2.50倍 | 122,944人 | 435.0万円 | 152万円 |
| 13 | 自動車運転従事者 | 2.61倍 | 2.54倍 | 101,403人 | 466.8万円 | 163万円 |
| 14 | 接客・給仕職業従事者 | 2.59倍 | 2.31倍 | 79,085人 | 371.0万円 | 130万円 |
| 15 | 飲食物調理従事者 | 2.47倍 | 2.21倍 | 117,493人 | 379.1万円 | 133万円 |
| 16 | 販売類似職業従事者 | 2.25倍 | 1.98倍 | 5,480人 | 664.5万円 | 233万円 |
| 17 | 営業職業従事者 | 2.16倍 | 2.05倍 | 78,382人 | 638.8万円 | 224万円 |
| 18 | 保健師,助産師,看護師 | 2.05倍 | 2.00倍 | 99,627人 | 514.6万円 | 180万円 |
| 19 | 医師,歯科医師,獣医師,薬剤師 | 2.03倍 | 1.70倍 | 9,742人 | 1127.3万円 | 395万円 |
| 20 | 製品製造・加工処理従事者(金属製品) | 1.99倍 | 2.15倍 | 37,280人 | 487.3万円 | 171万円 |
| 21 | 製造技術者(開発) | 1.93倍 | 1.92倍 | 15,164人 | 683.0万円 | 239万円 |
| 22 | 商品販売従事者 | 1.85倍 | 1.72倍 | 110,545人 | 401.2万円 | 140万円 |
| 23 | 製品製造・加工処理従事者(金属製品を除く) | 1.70倍 | 1.60倍 | 63,770人 | 430.5万円 | 151万円 |
| 24 | 情報処理・通信技術者 | 1.50倍 | 1.33倍 | 53,727人 | 628.9万円 | 220万円 |
| 25 | 清掃従事者 | 1.27倍 | 1.12倍 | 68,354人 | 346.4万円 | 121万円 |
| 26 | 運搬従事者※2 | 1.10倍 | 1.06倍 | 59,324人 | 416.4万円 | 146万円 |
| 27 | 営業・販売事務従事者 | 1.00倍 | 0.88倍 | 18,113人 | 525.1万円 | 184万円 |
| 28 | 管理的職業従事者 | 0.96倍 | 0.81倍 | 6,111人 | 966.8万円 | 338万円 |
| 29 | 機械組立従事者 | 0.70倍 | 0.91倍 | 19,046人 | 511.7万円 | 179万円 |
| 30 | 会計事務従事者 | 0.62倍 | 0.55倍 | 19,113人 | 512.2万円 | 179万円 |
| 31 | 一般事務従事者 | 0.34倍 | 0.29倍 | 138,724人 | 548.0万円 | 192万円 |
| 32 | 事務用機器操作員 | 0.33倍 | 0.27倍 | 5,619人 | 428.8万円 | 150万円 |
| 33 | 美術家,デザイナー,写真家,映像撮影者 | 0.17倍 | 0.15倍 | 4,783人 | 532.2万円 | 186万円 |
表から読み取れる事実を3つ挙げます。1つ目は、表1の上位8職業のうち4つが建設関係の現場作業職(建設躯体工事・土木作業・建設(大工・配管等)・電気工事)だということです。2つ目は、2025年平均と2026年8月で順位の大枠が変わっていないことです。上位の建設・保安・技術者と、下位の事務職という並びは同じで、一時的な変動ではなく構造的な偏りだと読めます。3つ目は、求人の母数と倍率は別の話だということです。有効求人数が最も多いのは介護サービス職業従事者(月平均20万3,077人)ですが、2番目に多い一般事務従事者(13万8,724人)の倍率は0.34倍しかありません。
倍率を読むときの4つの注意点
有効求人倍率は便利な数字ですが、何を数えた数字なのかを押さえずに使うと、領域選びを誤ります。紹介会社の視点で特に注意したいのは次の4点です。
① 倍率は「人が足りない度合い」であって「儲かる度合い」ではない
倍率が示すのは需給の偏りだけです。人材紹介の売上は、成約1件あたりの手数料と成約件数の掛け算で決まります。倍率が高い職種は企業側の採用意欲が強い一方で、そもそも転職市場に出てくる求職者が少ないことも意味します。紹介会社にとって、求職者を集められなければ求人がいくらあっても成約は生まれません。さらに手数料は年収に料率をかけて決まるため、倍率が同じでも年収水準が違えば1件あたりの売上はまったく違います。倍率だけで順位を付けるのではなく、単価と母数をあわせて見る必要があるのはこのためです。
② ニュースの「有効求人倍率」と職業別の倍率は、数え方が違う
報道で使われる有効求人倍率は、新規学卒者を除きパートタイムを含む「一般」の数値を季節調整したものです。2026年8月は1.18倍でした(実数は1.16倍)。一方、職業別の表は「常用」(パートタイムを含む)の実数で、季節調整されていません。同じ2026年8月でも、常用の職業計は1.06倍です(出典: 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)」第1表・参考統計表6)。職業別の倍率をニュースの数字と並べて比べると、ずれが生じます。比べるなら、同じ表の「職業計」と比べるのが正確です。
パートタイムを含むか除くかでも値は変わります。たとえば介護サービス職業従事者の2026年8月の倍率は、パートタイムを含む常用で3.89倍、パートタイムを除く常用で3.50倍です(同 参考統計表6・7-2)。正社員の転職を扱う紹介会社であれば、パートタイムを除いた数字のほうが実態に近いことがあります。
③ 「職業計」より高いかどうかが、需給の基準線になる
倍率は1倍を境に読まれがちですが、職業別の比較では職業計を基準線にするほうが実務的です。2025年平均の職業計(常用・パートタイムを含む)は1.12倍でした。これを上回る職業は全体平均より人が採りにくく、下回る職業は全体平均より採りやすい、という読み方になります。本記事の図と象限分けも、この1.12倍を横の基準線にしています。
④ ハローワークの求人だけを数えた数字である
職業安定業務統計は、公共職業安定所(ハローワーク)が扱った求人・求職・就職をとりまとめた統計です。民間の人材紹介会社や求人広告に出ている求人は含まれていません。そのため、ハローワークをあまり使わない領域、たとえば高年収の専門職や管理職の採用市場は、この数字には表れにくいと考えるのが自然です。管理的職業従事者の倍率が0.96倍と低く出ていることは、その職種の人材が余っていることをそのまま意味するわけではありません。倍率は「公的な求人市場での需給」として読み、民間市場の手触りとは分けて扱ってください。
民間の紹介会社がどの職業で実際に就職を決めているかは、別の統計で確認できます。厚生労働省は職業紹介事業者が毎年提出する事業報告書を集計しており、有料職業紹介事業の常用就職件数は令和6年度で88万8,993件でした。職業別の上位は次のとおりです。
| 順位 | 職業(事業報告書の区分) | 有料職業紹介の常用就職件数(令和6年度) | 対前年度増減率 |
|---|---|---|---|
| 1 | 営業の職業 | 89,563件 | 15.4% |
| 2 | 看護師、准看護師 | 79,412件 | △10.3% |
| 3 | 一般事務・秘書・受付の職業 | 63,152件 | 13.6% |
| 4 | 情報処理・通信技術者(ソフトウェア開発) | 39,780件 | 11.4% |
| 5 | 施設介護の職業 | 39,719件 | 29.1% |
| 6 | 福祉・介護の専門的職業 | 38,846件 | 24.8% |
| 7 | 情報処理・通信技術者(ソフトウェア開発を除く) | 26,882件 | 11.5% |
| 8 | 建築・土木・測量技術者 | 26,230件 | 32.9% |
| 9 | 総務・人事・企画事務の職業 | 25,716件 | 35.7% |
| 10 | 特定技能の在留資格に係る職業紹介 | 23,142件 | 13.2% |
ハローワークの倍率と並べると、ずれがはっきり見えます。一般事務の倍率は0.34倍と33職業で下から3番目ですが、有料職業紹介では一般事務・秘書・受付の職業が3番目に多い6万3,152件の就職を生んでいます。倍率が低い=紹介会社に出番がない、とは言えないということです。倍率は需給の向きを見る材料として使い、民間の紹介市場の厚みはこの事業報告の数字で裏を取るのが、領域選びでは確実です。
倍率上位の建設作業職は、有料職業紹介では紹介できない
倍率1位の建設躯体工事従事者(7.91倍)、3位の土木作業従事者(6.24倍)は、数字だけを見れば最も有望な領域に見えます。しかし、有料職業紹介事業者は、建設業務に就く職業を求職者に紹介してはならないと定められています。職業安定法32条の11第1項は、港湾運送業務に就く職業とともに「建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務をいう。)に就く職業」を、有料職業紹介の対象から外しています(出典: e-Gov法令検索「職業安定法」)。
ただし、建設業界の求人がすべて対象外になるわけではありません。厚生労働省の「職業紹介事業の業務運営要領」は、この建設業務を建設工事の現場において、直接これらの作業に従事するものに限られると説明しています。そのうえで、建設現場の事務職員の業務や、機械等の製品の日常的な保守・点検の業務は取扱職業の範囲から除外されないこと、工程管理・品質管理・安全管理などを行ういわゆる施工管理業務は建設業務に該当せず、有料職業紹介事業を行うことができることを明記しています(出典: 厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」令和8年10月1日から適用・第2の3(4))。
- 扱えない:建設工事の現場で直接作業に従事する業務:躯体・土木・大工・配管・電気工事などの施工作業(職業安定法32条の11第1項)。表1では建設躯体工事従事者、土木作業従事者、建設従事者(建設躯体工事従事者を除く)、電気工事従事者がこれを中心とする職業です。
- 扱える:施工管理業務:施工計画の作成と、それにもとづく工程管理・品質管理・安全管理など(業務運営要領 第2の3(4)ロ)。表1では建築・土木・測量技術者がこれにあたります。
- 扱える:建設現場の事務、機械等の製品の日常的な保守・点検:建設業務に従事するものに該当しないとされています(同 第2の3(4)イ)。
つまり、表1の上位8職業のうち、建設の現場作業職4つは倍率の高さをそのまま紹介ビジネスの機会と読めない職業です。実績にもそれが表れており、令和6年度の有料職業紹介の常用就職件数は、建設躯体工事の職業が0件、土木の職業が8件、建設の職業(建設躯体工事の職業を除く)が5件でした。一方、施工管理を含む建築・土木・測量技術者は2万6,230件です(出典: 厚生労働省「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」)。建設領域で紹介事業を行うなら、対象は施工管理を担う技術者や建設会社の事務職などになります。なお、建設労働者の雇用の改善等に関する法律18条1項にもとづいて厚生労働大臣の許可を受けた認定団体は「建設業務有料職業紹介事業」を行えるとされていますが、これは同法の認定団体に限った例外の制度で、一般の紹介会社が有料職業紹介の許可で行えるものではありません(同要領 第2の3(1))。求人の業務内容が建設業務にあたるかどうか判断に迷う場合は、管轄の都道府県労働局に確認してください。
紹介ビジネスの適地は「倍率×単価×母数」で見る
人材紹介会社がどの職種で戦うかは、有効求人倍率(需給)・手数料の単価(年収×料率)・求人の母数(有効求人数)の3軸を重ねて判断します。倍率は企業が紹介会社にお金を払ってでも採りたいかどうか、単価は1件決めたときの売上の大きさ、母数は事業として続けられるだけの案件量があるかどうかを表します。どれか1つだけが良くても、紹介ビジネスとしては成り立ちにくくなります。
- 倍率(需給):企業が自力で採れない度合い。高いほど紹介料を払う動機が強い。職業計(2025年平均1.12倍)を基準線にする。
- 単価(年収×料率):成約1件あたりの売上。本記事では比較のため平均年収×35%で一律に換算した。実際の料率は相場で30〜35%、専門職・ハイクラスでは35%以上になる場合もあり、職種で差がある。
- 母数(有効求人数):その職種の求人の厚み。少なすぎる領域は、特化しても案件が続かない。
職種別 有効求人倍率 × 手数料の理論値 × 有効求人数(33職業)
図1で水色に塗った右上の領域は、倍率が職業計を上回り、かつ平均年収が33職業の中央値(487.3万円。理論値で171万円)を上回る職業です。建築・土木・測量技術者、機械整備・修理従事者、営業職業従事者、保健師・助産師・看護師、情報処理・通信技術者、製造技術者(開発)、販売類似職業従事者、医師・歯科医師・獣医師・薬剤師が入ります。この領域は、企業の採用難と1件あたりの単価が両方そろう、紹介ビジネスの主戦場です。
単価の換算に使った35%について補足します。手数料率の相場は理論年収の30〜35%で、専門職・ハイクラスでは35%以上になるケースもあります(料率の根拠と法的な枠組みは人材紹介の手数料相場|30〜35%の根拠と法的上限・理論年収・返戻金の実務が正典です)。したがって一律35%の換算は、一般職では上振れ、専門職では下振れ方向の近似になります。また平均年収は在職者全体の平均で、転職時に提示される理論年収とは一致しません。図の理論値は職種同士を同じ物差しで比べるための値であり、自社の売上見込みとしてそのまま使わないでください。
4つのタイプ別の読み解き
図1の縦線(年収の中央値)と横線(職業計の倍率)で、33職業は4つのタイプに分かれます。建設現場の作業職4つは前述の理由で除いて整理します。タイプごとに、紹介ビジネスとしての性格と、立ち上げ時に考えるべき論点が違います。
| タイプ | 該当する主な職業(表1より) | 紹介ビジネスとしての性格 | 立ち上げ時の論点 |
|---|---|---|---|
| A. 高倍率×高単価 | 建築・土木・測量技術者、機械整備・修理、営業職、看護師等、情報処理・通信技術者、製造技術者(開発)、医師・薬剤師等、販売類似 | 採用難と単価がそろう主戦場。1件の売上が大きい | 単価と需給がそろう分、参入も集まりやすい。求職者をどう集めるかで差がつく |
| B. 高倍率×低単価 | 介護サービス、保安(警備員等)、社会福祉専門職、自動車運転、飲食物調理、接客・給仕、商品販売、医療技術者、生活衛生サービス、保健医療サービス、製造・加工、清掃 | 求人の母数が大きく、企業の採用意欲も強い。1件あたりの単価は小さい | 件数を回す前提の業務設計が要る。1人あたりの対応件数と記録の手間が採算を左右する |
| C. 低倍率×高単価 | 一般事務、会計事務、営業・販売事務、管理的職業、機械組立、美術家・デザイナー等 | 求職者は集めやすいが、企業は自力でも採用しやすい | 紹介を使う理由を企業に示せるかが鍵。民間の就職実績は多い職業もあるため、倍率だけで切り捨てない |
| D. 低倍率×低単価 | 運搬、事務用機器操作 | 需給・単価とも紹介ビジネスとしての条件が弱い | 単独の主力領域にはしにくい |
A. 高倍率×高単価:主戦場ほど「求職者の集め方」で決まる
Aタイプは企業が紹介料を払う理由がはっきりしており、1件あたりの売上も大きい領域です。その反面、倍率が高いということは転職市場に出てくる求職者が少ないということでもあり、求人を集めることより、求職者に選ばれることのほうが難しい領域です。職種の専門知識に裏打ちされた面談や求人の目利きで、求職者から「この会社に相談したい」と思われるかどうかが勝負になります。
B. 高倍率×低単価:件数を回す業務設計が前提になる
Bタイプは求人の母数が最も厚い領域です。介護サービス職業従事者は有効求人数が33職業で最大の月平均約20万人、倍率も3.88倍と高水準ですが、理論値は136万円とAタイプの多くを下回ります。この領域で売上を立てるには、成約件数を積み上げる必要があります。1件ごとの面談・推薦・日程調整を少ない手間で回せるかどうか、そして記録の抜け漏れなく多くの求職者を並行して追えるかどうかが、そのまま採算を決めます。
C. 低倍率×高単価:倍率だけで切り捨てない
Cタイプの事務職は年収水準こそ中央値を上回りますが、ハローワークでは求職者が求人を大きく上回っています。一般事務従事者の倍率は0.34倍です。企業は求人を出せば応募が集まりやすく、紹介会社には「なぜ紹介を使うのか」を示すことが求められます。ただし前述のとおり、有料職業紹介での一般事務・秘書・受付の職業の常用就職は6万3,152件(令和6年度)と多く、民間の紹介市場は倍率の印象より厚い領域です。求職者を集めやすいことは、紹介会社にとってはむしろ強みにもなります。管理的職業従事者も倍率0.96倍・理論値338万円と出ていますが、管理職の採用はハローワークを経由しにくく、事業報告では法人・団体管理職員だけで1万6,007件の就職が有料職業紹介で決まっています。
領域を決めたら何をするか
特化型の人材紹介とは、扱う職種・業界・年収帯を絞り込み、その領域の求人と求職者に集中して紹介を行う事業の形です。総合型と比べて扱える案件の幅は狭くなりますが、職種の知識が面談・求人開拓・推薦のすべてに効くため、少人数でも求職者と企業の双方に提供できる情報を厚くしやすいと考えられます。なお、特化型と総合型の優劣を示す公的な統計は確認できませんでした。当社の開業ガイドでも、立ち上げ期は総合型を目指すより勝てる領域に絞るほうが動きやすいとしています。
- 1. 求人の業務内容が取扱職業の範囲に入るかを確認する:建設業務・港湾運送業務に就く職業は紹介できません(職業安定法32条の11)。建設領域を選ぶなら、施工管理など対象になる業務に絞ります。
- 2. 取扱職種の範囲を決めて届け出る:有料職業紹介事業者は、取扱職種の範囲等を定めたときは厚生労働大臣に届け出なければならず、変更したときも同様です(同法32条の12第1項)。許可申請の手続きは開業ガイドにまとめています。
- 3. 単価の前提を固める:選んだ職種の年収帯に対して、どの料率で契約するかを決めます。料率の相場、上限制と届出制の違い、理論年収の定義は手数料相場の記事を参照してください。
- 4. 職種別の実績を記録できる形で始める:領域の仮説が当たっているかは、職種ごとの面談数・推薦数・成約数・単価を記録して初めて検証できます。最初から職種単位で集計できる形で記録を残しておくと、領域を広げる・絞るの判断が数字でできます。
4番目について補足します。開業すると、毎年4月30日までに職業紹介事業報告書で前年度の求人・求職・就職の実績を報告する義務が生じます(書き方は職業紹介事業報告書の書き方で解説しています)。職種ごとの実績が日々の記録から出せる状態にしておけば、報告書の作成と、自社がどの領域で成果を出しているかの振り返りを同じデータで行えます。Emproは人材紹介に特化したCRM/MAとして、求職者・求人・選考ステータスを1つの基盤で管理できるよう設計しています(対応範囲は機能一覧を参照)。
許可要件から申請、開業後の年次義務までを一続きの手順として確認するなら、有料職業紹介事業とは|許可要件・申請手続き・年次義務と開業までの全ステップが入口です。
よくある質問
Q. 職種別の有効求人倍率で最も高い職種は?
A. 厚生労働省の職業安定業務統計(常用・パートタイムを含む)で2025年平均の有効求人倍率が最も高いのは建設躯体工事従事者の7.91倍で、保安職業従事者6.55倍、土木作業従事者6.24倍、建築・土木・測量技術者5.60倍が続きます。2026年8月も建設躯体工事従事者が8.25倍で最高です。最も低いのは美術家・デザイナー等の0.17倍、職業計は2025年平均で1.12倍でした。
Q. 有効求人倍率が高い職種ほど人材紹介で儲かりますか?
A. そうとは限りません。倍率は需給の偏りを示すだけで、紹介会社の売上は成約1件の手数料と成約件数で決まります。倍率が高い職種は求職者が少なく集めにくいうえ、年収水準が低ければ手数料も小さくなります。倍率上位の建設現場の作業職は、職業安定法32条の11により有料職業紹介では紹介できません。倍率・手数料の単価・求人の母数の3軸で判断します。
Q. 人材紹介は特化型と総合型のどちらが有利ですか?
A. どちらが有利かを示す公的な統計は確認できず、資本や人員によって答えは変わります。当社の開業ガイドでは、少人数で立ち上げる段階は扱う職種・業界・年収帯を絞るほうが動きやすいという考え方をとっています。職種の知識が面談・求人開拓・推薦に直接効くため、限られた人数でも提供できる情報を厚くしやすいからです。領域を選ぶときは、倍率・単価・母数の3軸で候補を比べます。
Q. 有効求人倍率はどこで確認できますか?
A. 厚生労働省が毎月公表する「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」で確認できます。報道発表資料の参考統計表に職業別の有効求人倍率が掲載され、過去の数値や年平均は政府統計の総合窓口(e-Stat)で取得できます。報道で使われる全体の倍率は季節調整値、職業別の表は常用の実数で、数え方が異なる点に注意してください。
Q. 建設業の求人を人材紹介で扱うことはできますか?
A. 建設工事の現場で直接作業に従事する求人は、職業安定法32条の11により有料職業紹介では紹介できません。一方、厚生労働省の業務運営要領は、工程管理・品質管理・安全管理などを行う施工管理業務は建設業務に該当せず、有料職業紹介を行えるとしています。建設現場の事務職や、機械等の製品の日常的な保守・点検の業務も対象から除外されません。
